膵臓がんの手術前・手術後の看護と観察項目や看護目標を知ろう!

膵臓がんの手術を受ける患者の看護

内科的治療を主としているが、内科的治療で症状が軽減しない場合や増悪する場合、複雑な合併症(脳壊死、出血、膵臓がんとの鑑別が困難な腫瘤など)を有する場合は外科的治療の適応となる。
外科的治療には、膵頭十二指腸切除術・膵体尾部切除術・膵全摘術などがある。膵臓の位置が多臓器と隣接しているため、手術の範囲が広く、それに伴って手術侵襲が大きい。また、膵臓の機能の特殊性や胆道系の特殊性を考慮して、手術後吻合部の回復を促し、異常の早期発見のためのドレナージを行うことが多い。膵液漏や胆汁漏などの合併症とあわせて、膵臓の手術後は耐糖能の低下がおこりやすく、創部回復の悪影響を避けるため血糖コントールも必要とされる。
膵臓がんの詳しい疾患理解については、下記を参考にして下さい。

膵臓がんの手術前の看護

手術前は高血糖の患者には血糖コントロールを行い、閉塞性黄疸の患者には減黄対策として胆道ドレナージが行われる。栄養状態がわるい場合は中心静脈栄養管理や経管栄養管理を行い、手術後の回復が順調に経過するように手術前に身体の準備を行う。

膵臓がんの手術前のアセスメント視点と観察項目

  • 手術に関する内容:①術式・手術時間・麻酔時間、②ドレーンの種類・数・ドレナージの部位
  • 全身状態:バイタルサイン、水分出納バランス、倦怠感
  • 栄養状態:体重の変化、食事内容・量・回数、栄養補給の有無(栄養補給が必要な場合は栄養補給の方法・内容)、皮膚の状態
  • 疾患に伴う症状:①疼痛:有無・程度、放散痛の有無、②黄疸:有無・程度(黄疸がある場合は減黄術の方法、倭怠感、皮膚の状態)、③消化器症状:吐きけ・嘔吐・腹部膨満感・腸蠕動運動、④高血糖症状:空腹感・倦怠感・口渇、飲水量と尿量の増加排泄状態:回数・性状
  • 検査データ:①血液検査:赤血球数・白血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット・総タンパク質・アルブミン・AT・ALT・総ビリルビン・血液尿素窒素・血糖値・HbA1c・アミラーゼ、②尿検査:尿糖・尿中アミラーゼ、③呼吸機能検査、心電図検査、胸部X線検査、超音波検査 CT、血管造影検査、ERCP、血液型検査、④空腹時血糖値、75g OGIT
  • 患者・家族の手術に対する理解と不安

膵臓がんの手術前の主な看護目標

  1. 全身状態の改善・維持ができ、手術に対する身体の準備ができる。
  2. 手術の内容や手術後の経過を理解し、不安が軽減される。

膵臓がんの手術前の看護活動

一般には開腹手術、とくに肝臓・胆嚢の手術を受ける患者に準じる。手術前の看護活動は、次のとおりである。

栄養状態の改善

食事摂取量、排便の状態、総タンパク質・アルブミンなどの測定値や体重の変化などから栄養状態を把握し、栄養状態を改善・維持する栄養法が効果的に行われるように援助をする。

血糖コントロール

糖尿病の場合は、手術前から血糖コンロトールを行い、手術後の創部の治癒と感染などの合併症を予防する。血糖コントロールにインスリンを用いる場合もあり、慢性膵炎で低血糖をおこしやすい患者のインスリン投与後にはとくに注意した観察が必要である。

全身状態の維持

黄疸・低栄養状態・疼痛など種々の症状を把握し、活気や体力に合わせて手術前の日常生活を援助する。減黄に対する胆道ドレナージが行われてる場合は、水分出納バランスもアセスメントする。

黄疸に対する詳しい看護をcheck!!
黄疸に対する看護と観察項目や看護目標

術前訓練・術前オリエンテーション

膵臓の手術は、上腹部の開腹手術となるため深呼吸が妨げられる。手術時間は長時間に及ぶため、看護師は呼吸機能検査値や喫煙歴を把握し、患者にあっ た呼吸法や排痰法を指導する。加えて、腹部に影響が少ない体位変換や起き上がりの方法を体験してもらう。
手術後は数本のドレーン・チューブが挿入される。そのため、術前オリエンテーションでは、患者の不安を軽減し、手術後の生活や身体像をイメージできるように、以下のことにを行う。

  1. 手術直後からの疼痛緩和の実施
  2. 早期離床の利点
  3. ドレー ン・チューブ挿入の必要性を説明する。

膵臓がんの手術後の看護

膵臓の手術後は術後侵襲が大きく、また患者の苦痛も大きい。離床までの安静膵臓の内分泌機能の低下と外分泌機能の低下に対する看護を行い、患者の苦痛を最小限に抑えながら、順調な回復をたどれるように援助する。

膵臓がんの手術後のアセスメント視点と観察項目

  • 手術に関する内容:①所要時間・麻酔時間・出血量、②ドレーン挿入部位・種類・数、③麻酔覚醒時の状態
  • 全身状態:バイタルサイン・中心静脈圧・水分出納バランス(排液量・尿量・出血量・補液量・輸血量)・意識状態・倦怠感の有無と程度
  • 疼痛:疼痛の有無・部位・程度、疼痛コントロールのための治療・処置、患者の疼痛コントロールの活用
  • 創傷の回復状態:創部ドレッシング内の出血、滲出液の量・性状の変化、ドレーンからの排液量・性状の変化(とくに膵管ドレーン・腹腔ドレーン)、ドレーン刺入部の状態
  • 呼吸状態:呼吸音の減弱の有無、肺雑音の有無、努力様呼吸の有無(深呼吸が可能であるか)、排痰の有無と痰の性状、咳嗽の有無、酸素療法の有無
  • 消化管と排泄状態:腸蠕動運動、腹部膨満感、便の性状・回数(とくに食事開始後の便の性状)
  • 食事摂取と栄養状態:食事摂取量、経口栄養不可の場合の栄養法とその内容
  • 検査データ:①血液検査:赤血球数・白血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット・総 タンパク質・アルブミン・AST・ALT・総ビリルビン・血液尿素窒素・血糖値・HbA1c・アミラーゼ・プロトロンビン時間(PT)・C反応性タンパク質、②尿検査:尿糖・尿中アミラーゼ・尿タンパク・尿の比重、③血液ガス分析:pH・Pao₂・Paco₂・塩基過剰(BE)、④経皮的酸素飽和度、⑤心電図検査、胸部・腹部X線検査、⑥排液:アミラーゼ

膵臓がんの手術後の主な看護目標

  1. 全身状態が安定して経過するよう異常の早期発見・早期予防ができる。
  2. 苦痛・疼痛が緩和されて日常生活範囲を広げられる。
  3. 手術によって変化した膵機能に応じた治療や生活行動がとれる。
  4. 回復への意欲をもち、主体的に合併症の予防に取り組むことができる。

膵臓がんの手術後の看護活動

手術直後の安静期間には、疼痛を十分コントロールし、呼吸機能・循環動態の変動に留意して呼吸不全や腎不全など急性期におこりやすい合併症を予防する。膵臓の手術後は、多くのドレーン・チューブ類によって拘束感を強く感じる。また、疼痛によって患者自身での体動がむずかしい状態であることから、せん妄にも注意する。膵機能が変化をしているため、血糖の変化、消化・吸収機能の変化に留意し、合併症がおこらないようにする。

循環動態の管理

手術中は出血量が多く、広範囲の手術創であるため、手術後はバイタルサイン・中心静脈圧・水分出納バランスに注意し、循環動態の確認を行う。血液検査のアルブミン値にも注目し、循環動態のアセスメントを行う。

膵臓がんの手術後の呼吸状態の管理

手術創が上腹部にあること、また長時間の手術であることから、呼吸状態の観察が必要となる。浅呼吸である場合は、無気肺になる危険性が高い。手術前に行った呼吸法や排痰法を促し、積極的に呼吸を行うよう指導する。出血量が多く、ヘモグロビン値が低下している場合は、呼吸数が増えることに伴って換気量が少なくなるので、とくに援助が必要である。呼吸状態の観察のほか、経皮的酸素飽和度や血液ガス分析の値、胸部X線検査の結果なども参考にしてアセスメントする。また安静度に合わせて、体位変換やギャッチアップ、上体が挙上できる体位をとり、呼吸器合併症を予防する。

ドレーン類の管理

手術後の出血・滲出液を体外に誘導して感染予防をするもの、膵管ドレーンのように膵液が膵管内圧上昇を予防するもの(減圧)、膵液漏などのモニタリングをするものなど、術式によって多様なドレーンが挿入されている。どれも手術の経過を左右する重要なドレーンである。そのため、ドレナージが正しく行われるようドレーン管理が必要とされる。ドレーンの屈曲・閉塞を避け、抜去しないようにしっかりと固定をする。患者が離床し活動するときにドレーンが邪魔にならず、かつ抜去させない工夫を行う。
膵空腸吻合部に挿入されたドレーンの排液が混濁(乳白色)し粘稠度が高い場合は、膵液漏が疑われるまた、排液のアミラーゼ値もあわせてアセスメントする。胆管空腸吻合部に挿入されたドレーンに胆汁が混入した場合は、胆汁漏が疑われる膵液漏や胆汁漏は、縫合不全につながる重要な徴候であるので、すみやかに医師に報告する。

膵臓がんの手術後の血糖コントロール

高血糖状態が続くと、縫合不全や感染の危険性が高まる。手術後はシリンジポンプを用いてインスリンを持続静脈内投与し、血糖をコントロールする。医師から指示された時間の血糖値測定と、それ以外にも高血糖・低血糖の症状の観察をして異常の早期発見に努める。膵全摘術の場合は、低血糖がおこりやすいため注意が必要である

栄養状態の管理

禁食中の栄養状態は手術後の体タンパク質(血液中の変化と相まって低下するため、中心静脈栄養や経管栄養が確実に行われるよう援助する。食事を開始すると膵液の分泌が増加されるため、膵液漏に注意してドレーンからの量・性状を観察する。また、膵炎を併発することもあるため膵炎の項にある観察項目もあわせて観察する。膵液の分泌が低下または膵全摘術の場合は外分泌機能がなくなるため、栄養の消化・吸収障害をおこしやすい。とくに、脂肪の消化・吸収機能が低下する。脂肪を控えた食事の指導が必要となるまた。食後に胃部膨満感がある場合は、1回の食事摂取量を少なくし、食事回数を増やす工夫をする食事内容に関しては慢性膵炎に準じる。

排泄の管理

膵臓の手術後は、外分泌機能が低下することが多い。とくに膵全摘術は膵臓の外分泌機能がなくなるため、消化・吸収機能が障害され脂肪性の下痢を引きおこすことが多い。下痢が続く場合は、食事内容や摂取方法を工夫することが必要となる。下痢症状が落ち着かない場合は、止痢薬の投与と、肛門周囲の保清を行う。下痢症状のコントロールが困難である場合は、日常生活もとどこおり、水分・電解質の損失よって脱水になる可能性があるため、血液検査結果とあわせてアセスメントする。

下痢に対する看護援助をcheck!!
下痢に対する看護と観察項目や看護目標

膵臓がんの手術後の食事指導・生活指導

  1. 血糖コンロトールが必要な場合は、糖尿病の生活指導と同様に自己血糖測定とインスリン注射の指導、糖尿病食の指導、高血糖・低血糖症状の観察と症状発現時の対処方法、シックディ(体調不良)への対応などを指導する。
  2. 食べ物が胃に停滞する時間が長くなり胃部膨満感を感じる場合は、1回の食事摂取量を少なくし、食事回数を増やすこと、食後は座位を保ち胃容量 が広がる工夫を指導する。また、胃の停滞時間が短い脂肪の少ない肉・魚類や食物繊維の少ない野菜など消化のよい食品を選択する
  3. 膵頭十二指腸切除術の場合は、胃切除術後の食事摂取方法に準じてダンピング症状の予防と小胃症状への対応を指導する
  4. 下痢が続く場合は、脂肪が少なめの食品や調理方法を工夫することが必要となる。食べ方も胃部膨満と同様に、胃や腸での消化をたすける摂取方法を指導する
  5. 下痢症状がおさまらない場合は、体重の減少や脱水の危険性がある。毎日の健康状態を患者自身が確認し、異常があった場合は早めに受診をするように指導する。

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