意識障害(肝性脳症)に対する看護と観察項目や主な看護目標

意識障害(肝性脳症)のある患者の看護

肝性脳症は、肝炎・肝硬変症・肝細胞がんなどを起因として肝不全に陥ったときの特徴的な症状である。意識障害を中心とした精神神経症状で、腹水・黄疸などを伴うことが多い。治療が困難な症状であるため、前駆症状を早期に発見し、適切な対処が必要となる。
肝性脳症には気分の変動やだらしない態度といった前駆期から深昏睡まであり、しだいに重症となる場合が多い。患者の個性としてとらえていた性格や生活習慣などが、肝性脳症になり前駆症状とわかる場合もあるため、ふだんの患者の状態を観察することは重要である。肝性脳症を判断するには、肝性脳症の重篤度や症状を知ることが必要である。

肝性脳症の重篤度・昏睡度分類
Ⅰ:睡眠リズムの逆転、あるいは周囲に対する無関心など
Ⅱ:見当識障害、羽ばたき振戦が起こるのが特徴
Ⅲ:眠った状態になるが、外的刺激に対しては覚醒する。せん妄状態になったり、パニックになり暴れだすこともある。
Ⅳ:完全に意識を消失。痛み刺激には反応する。
Ⅴ:どの刺激に対しても無反応。

意識障害(肝性脳症)と関係する主な疾患
肝硬変症が進行した場合
劇症肝炎などの重篤な肝障害によって引き起こされる

意識障害(肝性脳症)のアセスメント視点と観察項目

全身状態

バイタルサイン・尿量・水分出納バランス・排便状態

意識障害の程度(意識レベル)

  • 睡眠と覚醒のリズム
  • 精神状態:気分・行動
  • 記憶力・注意力・集中力の程度
  • 見当識障害の有無と程度

前駆症状の有無と程度

  • 顔面・皮膚の状態、チアノーゼ・四肢冷感
  • 舌根沈下
  • 浮腫・腹水の貯留
  • 出血
  • 羽ばたき振戦
  • 腹部膨満
  • 急激な体重増加

検査データ(肝機能の程度を知る)

  • 血液中のアンモニア・血液尿素窒素(BUN)・TTT・ZTT・AST・AIT・LD(OH)・血清ビリルビン・y-GP
  • ナトリウム・塩素・カリウム・カルシウム
  • 総タンパク質・アルブミン・コレステロール
  • プロトロンビン時間・血小板数・赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット
  • 脳波異常の有無
  • 血糖値
  • 消化管出値(吐血・下血)
  • 栄養補給・種類・内容・量、補給時の状態
  • 肝性脳症の原因(脳波異常の有無)

意識障害(肝性脳症)の主な看護目標

  1. 経時的な一般状態と検査データの観察によって、異常を早期に発見する。
  2. 患者の安全をまもり、危険を防止する。
  3. 口腔内や全身の保清によって、肺合併症などの二次感染と合併症を予防する

意識障害(肝性脳症)に対する看護活動

劇症化徴候の早期発見

意識障害の程度を観察して、劇症化の徴候を見逃さないようにする。そのためには、食欲不振・全身倦怠感などの有無と程度、羽ばたき振戦・肝性口臭(甘いにおい)・精神神経症状の有無と程度などを観察する。

安全対策

興奮状態にあるときには、ベッド上に立ち上がったり、ベッドの柵を乗りこえようとしたり、異常な行動がみられるため、ベッドから転落しないように患者の安全をはかる身体を損傷する危険性の高いものは、ベッド上やベッド周囲に置かないように環境整備をする

清潔の保持

肝性脳症が出現するときには、黄疸や腹水も同時にみとめられるため、皮膚・粘膜を保護して清潔を保持する口腔内の清潔も呼吸器感染を予防するために必要である。

肝性脳症に付随する症状に対する看護の方法をcheck!!
腹水による腹部膨満に対する看護と観察項目や看護目標
鼓腸による腹部膨満に対する看護と観察項目や看護目標
黄疸に対する看護と観察項目や看護目標

症状悪化の予防

肝性脳症は、肝機能障害の代謝障害でアンモニアなどの毒性物質が血液中に増加することと、毒性物質が肝臓において代謝を受けずに門脈側副血行路を通って、直接体循環に流入し脳に作用することで生じる。アンモニアは下部消化管において腸内細菌の酵素による便の分解で産生される。便秘をおこすことで、便と腸内細菌の接触時間が延長すると、アンモニアの産生と吸収を増加させることになる。そのため、便通の調整が必要とされる。
食事はアンモニアの産生につながるタンパク質の摂取を制限(30~60g/日) する。また、肝機能障害のある患者は低血糖をおこしやすく、肝性脳症を悪化させるため、高エネルギー食とする

消化管出血で腸内に血液のタンパク質が流入すると、高タンパク食を摂取した状態と同じになる。また、循環血液量の減少による低酸素症は肝血流量を減少させ肝機能低下を助長する。出血傾向の程度を把握し、排泄物(吐物・糞便)の性状の観察を行い異常の早期発見に努める
利尿薬の使用で低カリウム血症をおこした場合は、腎臓でのアンモニア産生を高める。そのため、利尿薬の使用時は尿量・電解質の変化に注意し、脱水の予防に努める
感染をおこした場合も脳に強い抑制作用をおこすため、体タンパク質の分解を亢進させ血液中のアンモニアが増加する。呼吸器感染・尿路感染・皮膚の損傷からの感染など、患者の状況に応じて感染予防を行う。

肝臓への血流を維持し、肝機能の低下を防ぐため、安静が保持できるよう援助する。患者の体力を消耗させないよう環境整備を行い、安静が保てるようにする。意識障害により説明された内容を忘れてしまうこともあるので、患者には安静の必要性を根気よく説明する患者の悩みや不穏状態についても丁寧に落ち着いて対応し、精神面の安静が保てるように努める。

関連記事

  1. 食欲不振と体重減少に対する看護と観察項目や看護目標を知ろう!

  2. ヘルニアの原因と症状別の治療法

  3. 嚥下困難(障害)のある患者の看護目標や食事の援助

  4. (急性・慢性)心不全の原因や徴候を知り、治療方法を学ぼう!

  5. 吐血・下血に対する看護と観察項目や看護目標を知ろう!

  6. 胆嚢炎の看護と観察項目や主な看護目標を知ろう!

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。