血圧異常(高血圧症)の症状や治療、基準値について学ぼう!

血圧とは

血圧とは、血管を流れている血液が血管壁に及ぼす圧方のことである。脈・肺動脈・静脈・毛細血管・心臓などでそれぞれの圧力を測定することができるが、私たちがふつう血圧とよんでいるものは、動脈の血圧を意味する。

血圧の種類
血圧には、収縮期血圧や拡張期血圧、平均血圧などがある。収縮期血圧(または最高血圧)は、心臓が収縮している間に測定される最高の血圧値で、正常の場合には左室の収縮期血圧にほぼ等しい。拡張期血圧(または最低血圧)は、心臓が拡張している間に測定される最低の血圧値をいう。拡張期血圧は左室の拡張期圧よりも高い。収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧とよぶ。

血圧変動の要因
血圧を規定する因子は、心拍出量と末梢血管抵抗の2つである。
<血圧=心拍出量 × 末梢血管抵抗>
心拍出量を規定する要因は、心収縮力、心拍数、循環血液量などがある。一方、末梢血管抵抗を規定する要因には、血管内径の変化、収縮・拡張などがあり、自律神経系およびレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAA系)によって影響される。たとえば、運動中や運動後には、心拍出量が増すために血管の血液送血量は増加し、収縮期血 圧は上昇する。一方、自律神経系や RAA系の影響で血管は拡張するため、拡張期血圧はかえって下降する。

【血圧測定法】
[1] 診察室血圧
診察室で患者の血圧測定を行って得られた血圧値を診察室血圧とよぶ。安静座位で1~2分の間隔をおいて複数回測定し、安定した数値2回の平均値を採用する。コロトコフ音が最初に聴取されたときの圧が収縮期血圧で、コロトコフ音が最後に聴取されたときの圧が拡張期血圧である。

[2] 24時間自由行動下血圧測定
携行型血圧測定器(ABPM)を用いて、24時間連続して自由行動下の血圧が15分から 30 分間隔で測定可能になった。これによって、早朝や夜間の血圧測定も可能とな り、早朝高血圧や夜間高血圧の診断に有用である。また、病院などの医療機関 で普段よりも血圧が高くなる白衣高血圧の診断にも有効である。

[3] 家庭血圧
家庭血圧の測定は、患者の治療継続率を改善するとともに、降圧剤治療の調節にも役だつ。ことに服用前の測定は、薬効の持続時間を知るうえでも有用である。また、朝の高血圧や診察室血圧は正常だが家庭や職場で 血圧が高くなる仮面高血圧の診断にも有用である。指用や手首血圧計は測定が不正確となりがちなので上腕用血圧計の使用が推奨される。

【血圧を自己測定する時の注意点】
血圧は一日を通して一定ではない。運動しているときやその直後、入浴中 する際の注意
仕事中などによって数値は変動する。したがって、下記に注意して測定することが重要である。
(1)からだの力を抜いてリラックスする。
(2)座位をとり、心臓の高さにある上腕の血圧を測定する。
(3)毎回朝晩の同じ時刻に測定する(多くの場合、朝は起床後1時間以内あるいは朝食前、晩は就寝前に測定することが多い)。
(4)必ずしも頻回に測定する必要はないが、週に5~7回測定できるとよい。
(5)測定値に一喜一憂する必要のないことを指導する。

身体診察
肥満がないか、身長や体重の測定が必要である。初診時は、血圧は両上肢で行うべきである。間欠性跛行などの下肢の症状がある患者では、大腿動脈、足背動脈の触知および両下肢の血圧測定も必要となる。甲状腺腫の有無、心雑音の有無、不整脈の有無をみる。腎血管性高血圧の場合、左右差のある腹部血管 雑音が聴取されることがある。眼底検査は、高血圧の重症度や持続期間の推定に役だつので大切な検査である。

高血圧の基準・分類とその影響

高血圧の基準・分類

血圧値の分類
血圧値と心血管病発症のリスクには正の相関がみとめられる。高血圧(症)の定義は人為的になされたもので、アメリカ高血圧合同委員会第7次報告(JNC7)による分類と、わが国の実情に即した高血圧ガイドラインとして、改訂された「高血圧症治療ガイドライン 2009(JSH2009)」が日本高血圧学会より報告されている。

【JSH2009による高血圧の基準】(単位:mmHg)
診察室血圧
 ・収縮期血圧140~拡張期血圧90
家庭血圧
 ・収縮期血圧135~拡張期血圧85
自由行動下血圧
24時間
 ・収縮期血圧130~拡張期血圧80
昼間
 ・収縮期血圧135~拡張期血圧85
夜間
 ・収縮期血圧120~拡張期血圧70

(日本高血圧学会・高血圧治療ガイドライン 2009 による)

降圧目標
JSH2009 における若年者・中年者の降圧目標は、130/85mmHgであり、糖尿病や腎障害合併症例では、130/80mmHg未満としている。また、家庭血圧は、診察室血圧以上に生命予後の予知因子と考えられるようになっている。家庭血圧値は診察室血圧値よりも一般に低いとされているため、診察室血圧と家庭血圧で異なった高血圧基準を設けている(下記の表に詳細あり)。

【JSH2009による降圧目標】(単位:mmHg)
若年者・中年者
 ・130/85mmHg未満
高齢者
 ・140/90mmHg未満
糖尿病患者、慢性腎臓病患者、心筋梗塞患者
 ・130/80mmHg未満
脳血管障害患者
 ・140/90mmHg未満

(日本高血圧学会・高血圧治療ガイドライン 2009 による)

予後評価のためのリスクの層別化
血圧値のほかに、患者の予後を決めるものとして、危険因子がある。これには、喫煙、糖尿病、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病(CKD)、高齢、若年発症の血管病の家族歴などがある。JSH2009 には、メタボリックシンドロームが新たに危険因子として加わった。これらのリスクにより、高リスク管理が患者の予後にきわめて大切であるとの考え方から、血圧値に基づいた脳心血管リスク層別化が提唱されている。

高血圧症の分類
はっきりとした原因のわからない高血圧症を本態性高血圧症といい、全体の90%以上がこれに含まれる。これに対して、血圧上昇の原因となるはっきりした疾患がある場合は、二次性高血圧症とよばれる。

高血圧の影響

高血圧の症状と徴候

高血圧は、標的器官で合併症がおこるまで無症候性である。高血圧が長年続くと、動脈硬化をおこす。さらに高血圧の影響を受けやすい臓器として、心 臓・臓・腎臓・眼などがある。症状として、めまいや顔面潮紅、頭痛、疲労、鼻出血を伴うことがある。高血圧の徴候として、第Ⅳ心音があげられる。高血圧性心疾患の初期の徴候の1つである。高血圧およびそれに合併する動脈の変化は、眼底の動脈を直接見ることによって知ることができる。
高血圧による網膜変化には細動脈狭窄出血、滲出性病変、脳症を伴う場合は乳頭浮腫がある。また、高血圧による眼底変化を4群に分類するキース-ワグナーの分類がある(下記の表を参考に)。

【キース-ワグナー分類】
Ⅰ度
 網膜動脈の軽度の狭小化および硬化を示す。
Ⅱ度
 動静脈交差点における静脈の圧迫および動脈壁反射を伴った中等度の動脈硬化を示す。
Ⅲ度
 網膜細動脈のれん縮、綿花様白斑および出血斑をみとめる網膜像
Ⅳ度
 重度の網膜像に視神経乳頭浮腫を伴ったもの。

高血圧症の予後

高血圧による心臓・脳・腎臓などの変化の程度によって、予後が異なる。高血圧症の比較的初期には、心臓・脳・腎臓などへの影響は少なく予後はよいが、これらの臓器に及ぼす影響の程度は、高血圧症の期間が長ければ長いほどその 変化は大きくなる。したがって、この期間に十分に治療する必要がある。これらの臓器の変化が進行すると、やがて脳卒中(脳梗塞・脳出血や心筋梗塞、腎不全などで死亡する。

⓵.心臓への影響
高血圧があると、末梢動脈の血管抵抗が増し、心臓の仕事量が増加する。その結果、心筋線維が肥大する。X線検査や心電図検査で左室 肥大の所見がみられるが、やがては心不全をおこす。一方、高血圧があると冠 状動脈硬化をおこしやすく、狭心症や心筋梗塞をおこす。
⓶.脳への影響
高血圧は、脳動脈に対しても動脈硬化の変化をおこす。大脳 動脈など比較的太い動脈には、コレステロールなどの脂質が沈着して、その内 腔が狭くなると脳の血流障害があらわれ、閉塞をおこすと脳梗塞があらわれる。脳の内部の比較的細い動脈では、高血圧があると、血管壊死や動脈瘤をつくり、これが破れて脳出血をおこす。大きな脳梗塞や脳出血では、意識を消失や片麻痺などがあらわれる。血栓や塞栓ができても、すぐにとけた場合には、短時間 の間、手足が動かなくなったり、しびれたり、言葉がもつれたりするが、これらの症状はすぐに治ることもある。これを一過性脳虚血発作(TIA)という。

⓷.腎臓への影響
高血圧があると、腎細動脈に影響を及ぼし、尿の濃縮力が低下し、比重の低い尿が多量に排泄されるようになる。すなわち、尿の回数が 増加し、夜間の尿の排泄回回数が増加する。これは腎臓の細動脈が硬化し、腎臓の血液量が減少するためである。腎臓はやがて萎縮し、萎縮腎になるとともに、腎機能はしだいに低下し、やがては腎不全をおこす。

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