労作性狭心症の症状や検査を知り、治療方法を学ぼう!

労作性狭心症について

虚血性心疾患とは、冠状動脈系の動脈硬化による狭窄や血栓形成のために心筋への血液供給の減少ないし停止が、急性あるいは慢性に発生する一連の疾患のことである。
虚血性心疾患は、2つに大別することができる。第1のグループは、慢性の労作性狭心症(安定狭心症)であり、第2のグループが急性冠症候群(ACS)である。後者はさらに、⓵.心電図上ST上昇を呈するST上昇型心筋梗塞(STEMI)、⓶.不安定狭心症(UA)および、⓷.非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に分類される。

最もふつうの種類の狭心症である。労作性狭心症は、安静時には狭心症状がなく、労作時のみに症状が出現する。ほとんどの場合、歩行をやめたり、階段の途中で一息ついたりすると胸痛は消失するが、それでも消失しない場合、ニトログリセリン錠を1錠舌下投与すると、数分以内に症状がとれる。労作さえ行わなければ、発作が生じない状態で病状が安定している場合、安定狭心症 ともよばれる。外来を訪れる狭心症患者のほとんどは、診察の時点では胸痛はなく、心電図も正常所見であることが多い。
労作性狭心症の分類としては、1972年に提唱された、カナダ心臓血管学会(CCS)の労作性狭心症の分類が有名である(下記の表参照)。通常、駅の階段で朝だけに狭心症がおきれば2度、歩道橋の階段でおこる場合は3度程度と考えてよい。

カナダ心臓血管学会(CCS)の労作性狭心症の重症度分類
 ・1度
歩いたり、階段を昇ったりするような通常の労作では狭心症はおこらない。仕事やレクリエーションでの激しい長時間にわたる運動により、狭心症が出現する。
 ・2度
日常の生活ではわずかな制限がある。⓵.急いで歩いたり、⓶.急いで階段を昇ったり、⓷.坂道を昇ったり、⓸.食後、寒い日、風の日、感情的にイライラしたとき、起床後数時間の間に歩いたり、階段を昇ると狭心症がおこる。3ブロック以上歩いたり、1階から3階までふつうの速さで昇ると、狭心症がおこる。
 ・3度
日常生活の著明な制限がある。1~2ブロック歩いただけで狭心症が生じ、1階から2階まで昇るだけで、狭心症が生ずる。
 ・4度
どのような肉体的活動でも狭心症がおこる。安静時に胸痛があることもある。

※)アメリカやカナダの市内の、1ブロックは、約70~110mである。

労作性狭心症の病態生理

労作性狭心症は、冠状動脈に器質的な狭窄が存在するときに、運動などの労作により心筋酸素消費量が増大したときに、血液(酸素)の供給が追い付かなくなることによって狭心発作が生じるものである。この場合、安静に すると、増加した心筋の酸素消費量はもとの状態に戻る。その結果、心筋の虚血はとれて痛みはなくなる。狭心症をおこす冠状動脈硬化の程度については、その内腔が75%以上狭くなると、狭心症がおこるといわれている。
一方、不安定性狭心症(UA)や非 ST上昇性心筋梗塞(NSTEMI)の病態生理で最も一般的なものは、非閉塞性の血栓にプラークの破綻またはびらんが加わったものである(「急性冠症候群」を参考に)。また、一部の症例には、器質性狭窄はそれほどなく、冠動脈にれん縮が生じることによって発作を生じる冠れん縮性狭心症とよばれるものがある。

労作性狭心症の症状

狭心症の診断は、問診を行い、胸痛の特徴を聞き出すことによって行われる。胸部あるいはその近傍の不快感として、絞扼感・圧迫感などを訴えることが多い。不快感の部位は胸骨後部が多く、しばしば放散を伴う。その方向は左腕の 尺骨側の表面が多く、右腕や両腕の場合もある。そのほか頸部・顎・咽頭部へと放散することもある。狭心痛の部位や放散の方向は、心筋の障害部位とは無関係である。下顎より上部や、心窩部より下部の症状として感じられることはまれである。
狭心痛にはニトログリセリン舌下がただちに有効であることが多い。通常は1錠の舌下で十分であるが、無効の場合、さらにもう一錠舌下してもよい。

狭心症らしくない胸痛の特徴

鑑別を要するのは、
⓵.5秒以下、あるいは20~30分以上の症状、
⓶.1回深呼吸することによっておきたり増悪したりする不快感、
⓷.数秒間横になることによって改善する不快感、
⓸.体幹や腕を1回動かすことによっておこる不快感、
⓹.物や水を1~2回のみ込むことにより数秒以内に改善する不快感、
⓺.胸壁の圧痛を伴う痛みなどである。

鋭い、刺すような、または焼けるような痛みが秒単位でおきたり、30分以上の鋭い持続性胸痛があったりする場合は心外性である。また、ニトログリセリン錠の舌下使用に対する反応は、狭心症の診断根拠となる。症状の消失までに5~10分以上かかる場合は、狭心症とは考えにくい。
以上、痛みの性状・持続。合併する症状などを考慮して、心外性の胸痛と狭心痛を鑑別することは、通常可能である。典型的な狭心痛は徐々に始まり、数 分間で最高になり、消失していく。痛みを誘発する労作を中止することによっ て治るのが原則である。

労作性狭心症の検査

狭心症の診断にあたっては、以下のような検査が行われる。

標準12誘導心電図

発作中の心電図が記録できれば、診断に非常に有用である。労作性(安定)狭心症などでは、外来受診時の心電図は正常なことが多い。発作中の心電図所見としては、ST低下、ST上昇(冠れん縮性狭心症、不安定狭心症)、T波の陰転化などがある。

運動負荷心電図

無症候性あるいは病歴から判断しにくい症例で、虚血性心疾患を除外しなければならないような場合には、まず運動負荷心電図を施行する。負荷法として はマスターのツーステップーテストをはじめ、自転車エルゴメータ、あるいはトレッドミルを用いる方法が行われる。近年では、ブルース法によるトレッドミル試験が一般的に用いられている。これでは3分ごとにトレッドミルの傾斜と速度を上げ、年齢・性別で決められた予測心拍数に達するか、あるいは狭心症や有意なST変化が出現するまで検査を行うものである。
負荷中の典型的狭心症状の出現に加えて、ST-T変化がみられる場合には、診断は確定的となる。この場合、水平型あるいは下降型のST低下が2mm(0.2mV)以上みとめられれば、虚血性心疾患が検出される率は90%と高い。狭心症が出現しない場合には、水平型あるいは下降型 ST低下1mm(0.1mV)以上による検出率は70%に落ちる。この場合でも2mm 以上の低下があれば、90%に増す。完全左脚ブロックは、ST-T変化があらわれないため、診断を困難にする。
明らかに狭心症と思われる発作が頻発していたり、安静時に強い発作が生じていたりする症例に対しては、病状を悪化させる危険が大きいので、運動負荷心電図を行ってはいけない。

核医学検査

心筋血流シンチグラフィなどの核医学検査により、心筋虚血の判定や心機能の測定が行われる。
ホルター心電図

ホルター心電図は、日常生活中のSTの解析や、夜間におきる冠れん縮性狭心症発作時のST上昇の検出にすぐれている。胸痛発作時 に ST 変化が出現していれば診断の有力な証拠になる。しかし、体位変化によ り ST低下が生じる場合があるので、ST低下がみられたからといって、短絡的に狭心症と診断することは危険である。

心エコー図検査

左室壁運動の評価にすぐれており、虚血性心疾患の診断にも適した検査法の1つである。心筋梗塞では、安静時に局所的壁運動異常が検出できるが、狭心症でもみられることもある。さらにドブタミン薬物負荷(運動負荷)中、あるい
は直後に、狭心症の発現する前から壁運動異常がみられることがある。

心臓カテーテル検査

狭心症の診断と予後判定は、種々の非侵襲的検査の組み合わせで充足される場合が多い。しかし、虚血性心疾患の確定診断と病変の解剖学的重症度、心機 能評価のためには、冠状動脈造影と左室造影が不可欠である。
冠状動脈造影からは、冠状動脈の1枝・2枝・3枝病変あるいは左主幹部病変の診断、側副血行路の存在、経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)あるいはバイパス手術による治療の可否などについての情報が得られる。左室造影 からは、壁運動異常の局在と程度、駆出率からみた左心機能を判定する。
安静時の壁運動異常は心筋の不可逆的障害を示し、通常は心筋梗塞を意味する。壁運動異常は低収縮・無収縮・奇異収縮の3つに分類されるが、奇異収 縮は収縮期に外側に膨隆するもので心室瘤とよばれる。左室造影により、合併する僧帽弁逆流の診断と、その原因である乳頭筋不全が確認される。
CT

冠状動脈

16列や32列などの多検出器 CTが普及してきたため、主要冠状動脈であればTで観察が可能となった。

労作性狭心症の治療

狭心症の治療には、⓵.冠危険因子の是正、⓶.生活スタイルの指導、⓷.狭心症に対する薬物治療、⓸.PCI、冠状動脈バイパス術(CABG)による血行再建が含まれる。

冠危険因子への対処

[1] 高血圧
高血圧は危険因子の1つである。降圧薬(B遮断薬・g遮断薬・ACE 阻害薬・カルシウム拮抗薬など)で治療することが望ましい。減塩食、精神的ストレスの解消も必要である。
[2] 脂質異常症
脂質異常症の治療には、原則として食事療法が行われる。食事療法のポイントは、血清コレステロールが高い場合は飽和脂肪酸(動物性 脂肪の摂取を1としたら、1価不飽和脂肪酸(オレイン酸)および多価不飽和脂肪酸(リノール酸・エイコサペンタエン酸など)の摂取量を2とすることである。食事療法を行っても脂質異常症の改善がみられない場合には、HMGCoA 還元酵素阻害薬(プラバスタチン・シンバスタチン・アトルバスタチンなど)や、プロブコールなどを用いる。高トリグリセリド血症には、ベザフィブ 「ラート・ニコチン酸・デキストラン硫酸などが用いられる。
[3] 喫煙
喫煙はニコチンによる血圧上昇、冠血流の減少、血栓形成を助長させる作用があり、HDLコレステロールの低下がみられるため、禁煙とする。
[4] 糖尿病
糖尿病患者の死亡原因として冠状動脈障害がふえており、糖尿病のコントロールが虚血性心疾患の予防に重要である。
[5] 肥満
肥満者では高血圧・脂質異常症・糖尿病・痛風などの合併が多く、これらはいずれも冠危険因子である。したがって食事療法と運動療法によって肥満を是正する必要がある。
[6] 行動様式
ホワイトカラーのA型行動者で虚血性心疾患の発症率が高いといわれている。そのため、生活行動様式の改善指導が大切である。

労作性狭心症の薬物治療

[1] 硝酸薬
硝酸薬は血管平滑筋を弛緩させ、静脈を拡張させることにより静脈還流を減らし、心臓への前負荷を軽減させ、左室の壁張力を低下することで心筋酸素消費量を減少させる。また動脈拡張作用により、虚血心筋への酸素 供給量を増加させる作用がある。狭心症発作時には、ニトログリセリンの舌下投与が第一選択である。1錠(0.3mg)舌下で、通常3分以内に症状は消失するが、副作用として頭痛や血圧低下がみられる。近年では、ニトログリセリンの スプレー製剤も利用できる。また、硝酸イソソルビドも舌下で用いられ、効果 の発現はニトログリセリンよりも若干遅いが、作用時間はより長い。

長時間作用型硝酸薬
狭心発作の急速な改善には舌下錠ほど有効ではないが、発作の予防のために内服薬や皮膚貼付薬として用いられる。経口投与の場 合は、効果が約6時間程度持続する長時間作用型である。皮膚貼付剤(経皮的 に吸収される)もある。いずれの長時間作用型硝酸薬も連続して使用していると、耐性が生じるので、1日8時間ほどの休薬時間をおくことが望ましい。

[2] B遮断薬
労作性狭心症の重要な治療薬である。欧米においては、労作 性狭心症の第一選択薬である。交感神経を介する心拍数や心収縮力の増大を阻害することにより、労作時や精神的興奮時の酸素需要量を減らす。B遮断薬にはさまざまな作用があり、多くの種類の薬剤が開発されているが、副作用には注意が必要である。プロプラノロールは、気管支喘息や糖尿病患者には注意して使用する。アセブトロールやピンドロールなどの内因性交感神経刺激作用(ISA)のある薬剤は、交感神経活性 が低い安静時にはわずかなB刺激作用を示し、活動時など交感神経活性が増大 したときには通常のB遮断薬として作用するので、安静時には徐脈・伝導障 害・収縮性低下がほとんど生じないという利点がある。いずれも喘息患者には 投与しない方がよい。

[3] カルシウム拮抗薬
欧米では冠れん縮性狭心症が少ないこともあり、カルシウム拮抗薬を用いるとかえって交感神経を刺激することとなり、心血管死 亡率を上昇させるとの報告もある。しかし、わが国では冠れん縮性狭心症の頻度が多いので、カルシウム拮抗薬がよく用いられる。ジヒドロピリジン系ニフェジピン・ニカルジピンなど)、ジルチアゼム・パー パミルが用いられる。血管拡張作用の強いのがジヒドロピリジン系で、心筋加制作用があるのがジルチアゼム、両者を有するのがベラパミルである。

[4] アスピリン
アスピリンは血小板シクロオキシゲナーゼ活性の不可逆的 阻害薬であり、血小板活性化を妨げる。1日 81~100 mg の投与で、冠状動脈イベントの減少に効果のあることが示されている。

経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)

狭心症に対するPCIの最も一般的な臨床適応は、薬物療法にもかかわらず負荷試験で虚血が証明される狭心症である。PCI は症状軽減のためには、薬物療法よりも有効である(「心臓カテーテル治療」を参考に)。通常、PCIの対象は、75%以上の冠狭窄病変でバルーン到達が可能なもの。また解剖学的に治療しやすい病変がよい適応となる。通常は2枝病変例までが対象であり、左冠状動脈主幹部病変はリスクが高いので一般的には禁忌である。現在では、器具の進歩により、多枝病変例や完全閉塞後短期間の症例も適応となってきた。
従来のPTCA にかわって、ステント治療が行われることが多くなってきており、従来 40%前後あった実施後早期の再狭窄もかなり低くなってきた。とくに最近は、薬剤溶出ステント(DES)が最も多く用いられている。これは、
ステントに塗布された薬剤が徐々に血管壁に伝わり、再狭窄の原因となる細胞 の増殖を抑える。DES を留置した場合、従来のステントに比べて血栓が付着しやすいため、留置後当分の間(1年間またはそれ以上)、抗血小板薬のクロピドグレル(またはチクロピジン)を投与するので注意が必要である。

冠状動脈バイパス術

冠状動脈造影法により冠状動脈に多枝病変が存在することが明らかになり、かつ PCI治療が実施困難の場合は、冠状動脈バイパス術(CABG)が行われる。(CABG)技術の進歩により、左心機能低下例(左室駆出率(LVEF)30%以下)にも比較 的安全に手術が施行できるようになった。移植血管としては従来、もっぱら大伏在静脈片が用いられていたが、近年はより開存率のよい内胸動脈・胃大網動脈が好んで用いられるようになってきた。
また、近年、心臓を停止させずに拍動下でバイパス手術を行う体外循環非使用(心拍動下)冠状動脈バイパス術(OP-CAB)が普及しており、高齢者や合併症のある患者にも適応があり、数多く行われている(「冠状動脈バイパス術」を参考に)。

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