慢性心不全の看護と観察項目・アセスメントや看護目標について学ぼう!

慢性心不全患者の看護

慢性心不全はすべての心疾患を基礎疾患としておこりうる症候群である。慢性的な心臓のポンプ機能低下は、代償機転として前負荷・後負荷の増加、レニン-アンギオテンシン系、交感神経系の過剰反応を引きおこす。さらに、慢性 心不全は、心内圧の上昇に伴うバソプレシンなどの血管拡張因子の分泌の亢進 と、神経内分泌因子が複雑にからみあい引きおこされる症候群と捉えられている。また、心筋の収縮性は比較的保たれているが、拡張性の低下による拡張型 心不全も指摘されており、複雑な病態を示している。
米国心臓病学会 / 米国心臓病協会(ACC/AHA)による慢性心不全のステージ分類では、進行性の病態の開始は、心不全発症前からの連続した虚血性心疾患の危険因子の集積であることが示されており、予防期からの生活習慣の是正が重要となる。
治療には、薬物療法・食事療法が重要であり、安定期にあるコントロールされた慢性心不全では、運動療法も適応となる。また心機能に応じて、患者自身の活動や生活行動を調整していくことが必要になってくる。
難治性心不全では、生命予後の改善が見込めない状態に陥ることから、患者 の苦痛や症状の緩和が重要となる。急激な状態の悪化をもたらす場合も多く、状態の変化を予測しにくいことから、現在の状態や生命予後に対して患者・家族ともに大きな不安を持っている場合も多い。終末期にはその人らしい生を過ごせるよう、患者や家族の訴えを傾聴し、患者の症状や苦痛の緩和をはかり、その人をとらえて生を支援していくきめ細やかな看護支援が求められる。

慢性心不全のアセスメント・観察項目

アセスメント項目は、急性心不全に準ずる。
慢性心不全患者は、高齢者も多く、病態の評価に加え、普段の生活活動状況、ADL、認知機能、心理社会面など生活を見すえた多面的なアセスメント行い、包括的かつ継続的に支援していくことが重要である。
看護支援へのアセスメント
心不全では呼吸困難感、浮腫、食欲不振や吐きけなどの消化器症状や倦怠感、易疲労感などの身体症状のほか、抑うつや不安などの精神症状もおこしやすい。また、慢性腎臓病(CKD)などの合併症を持つ患者も多く、慢性腎臓病を伴うとエリスロポエチン産生能の低下により貧血をきたすことが多くなる。貧血は心不全の独立した増悪因子でもあり、相互に病態を悪化させ、これは心腎貧血症候群とよばれている。
高齢者では、身体恒常性の維持能力や予備能力の低下があるため、複数の疾患によって病態が悪化、複雑化しやすく、患者のQOLに大きく影響する。
看護師は、患者個々における普段の状況と症状を把握し、患者や家族にもよく理解してもらうことが重要である。とくに、高齢心不全患者の浮腫や食欲不振などの症状は気づきにくいため、家族や介護者によるモニタリングが重要となる。また、疾患や身体面の評価だけでなく、生活面をとらえた細やかな観察が重要であり、包括的かつ、入院から外来や地域医療機関と継続した支援をは かっていくことが望まれる。
慢性心不全患者の看護では、病態の各時期において、高いQOLが維持できるように患者や家族を支援していくことが大切である。

慢性心不全の看護目標

疾患を理解して、その人らしくQOLを高める生活をを送りながら、自己管理が行えることを目ざしていく。

【慢性心不全の看護目標例】
(1)心不全によりもたらされる身体症状が改善する。
(2)精神面の安定がはかられる。
(3)心不全の正しい病識を持ち、自己管理が行える。
(4)心臓の予備能力の範囲内で最大限の活動性を維持できる。
(5)心不全の悪化因子を知り、対処方法が行える。
(6)患者・家族が緊急時の対応をとることができる。
(7)患者・家族が効果的なソーシャルサポートを得ることができる。

慢性心不全の看護方法

慢性心不全患者の看護においても、急性心不全と同様に、患者や家族の訴えや症状を十分に把握して、苦痛の緩和をはかっていくことが重要である。とくに終末期のケアでは、患者・家族の身体的・精神的・社会的状況を把握したきめ細やかな看護支援が重要である。
効果的な自己管理に向けては、病態、増悪時の症状、服薬の重要性、食事や 水分制限、活動制限などについて患者やその家族が理解し、心不全の増悪因子の除去と予防に努めることが重要である。
原則的に、以下のような事項に関する患者教育を行い、生活の場で自己管理できるように指導を行っていく。

【慢性心不全の指導項目】
(1)心不全の病因・病態、現在の病状への理解
(2)心不全の増悪因子とその徴候の把握
(3)心不全の増悪時の症状と対処方法
(4)症状、体重・血圧などのセルフモニタリング
(5)食事指導:塩分制限の徹底、水分制限(必要な場合)、栄養のバランス
(6)アルコール制限:原則として禁止
(7)禁煙の重要性
(8)感染予防、インフルエンザの予防接種の重要性
(9)心不全の程度、心臓の予備能力に応じた生活行動
(10)レクリエーションなど日常生活での身体活動性の維持、運動療法
(11)服薬管理、服薬継続
(12)定期受診の重要性
(13)性生活の問題点と対処法
(14)予後や予測される事態について
(15)緊急時の対応:緊急時連絡、家族に対しての一次救命措置の指導
一般的な自己管理への留意点として以下の項目があげられる。

食生活

日本人の心不全増悪や再入院の誘因として、塩分・水分制限の不徹底が報告されている。塩分制限については、腎機能障害の進行抑制や高血圧症のコン トロール目標においても6g/日未満が推奨されている。また、重症心不全では、3g/日以下の厳格な塩分制限が行われる。腎機能障害を伴う場合は、タンパク質・カリウム・リンの制限などの順守も求められる。
高齢者においては食事摂取量が少ない場合もあり、塩分制限がさらなる食欲減退や栄養不良につながることもある。そのため、患者の嗜好や食習慣、生活状況をふまえて教育していくことが重要となる。塩分制限の基本は、制限の範囲内で食事ができるようになることである。塩味を感じるのは主観的なもので あるため、病院食から味の目安を知ることも大切である。
制限の継続には、患者本人のみならず、食事をつくる人が制限の必要性を理解することと、実際の摂取の目安を把握していくことが重要である。必要に応じて、栄養士から患者や家族に対し、基本的な塩分の知識をふまえつつ、家庭 の実情に応じた修正を行うように指導してもらうことが望ましい。また、水分制限のある場合、起床後・活動後・入浴後などの脱水に陥りやすいときでの効果的な摂取方法などを指導する。食事指導についてはあとで詳しく述べる(「心臓リハビリテーションと看護」参照)。

内服薬の自己管理

薬物療法は治療の基本であることを患者および家族に伝える。その際、利尿薬やB遮断薬などの投与が多く行われているため、脱水などの副作用に留意して症状モニタリングを行うよう指導する。また、内服薬の種類・量・服薬方法 などについて、継続して正確に服薬できるよう指導する。高齢者も多いことから、飲み忘れがないように一包化をはかったり、薬袋を確認したりするなど、看護師と薬剤師の連携による工夫や服薬指導を行い、自己管理が継続できるように援助していく。

セルフモニタリング

全身倦怠感の増強、下肢浮腫、食欲不振や吐きけ、体重増加などの症状は、心不全の増悪症状である。また同時に合併症として多い慢性腎臓病の増悪症状でもある。そのため、患者・家族に対して具体的な症状の理解を促す。また、症状出現時には、食塩制限や活動制限の実施やすみやかに受診することを指導していく必要がある。
毎日の体重、血圧測定を習慣化することはセルフモニタリングの重要な要素である。そのため退院後には、毎日の体重測定や血圧測定、体調の記録をすすめ、受診時に持ってくるように指導する。これらの実施は、患者には自分の身体管理に、医療者にはより的確な教育や治療効果の判定に役だつ。過剰な水分の貯留がないときの体重(ドライウェイト)を指導し、数日内で2kg以上の増加をみる場合は、うっ血症状の疑いもあるため、早期に受診をするとうに指導する。

運動・生活活動

必要な場合は6分間歩行テストなどの実施によって運動耐性能の確認を行い、その結果または心肺の予備能力の程度に応じて具体的な生活活動が指示される。患者の生活状況は、身体活動性が低い場合だけとは限らず、自宅における家事労働などの日常生活活動ですでに負荷が強くなっている場合もある。そのため、日常生活の具体的な過ごし方については十分に確認を行う。
生活の仕方については、心負荷につながるような動作を連続して行わないこと(二重負荷の防止)や心負荷を下げる生活の仕方について、実際の生活状況を聞きながら指導を行う。また、飛行機に乗ることや、高地や高温多湿の地域への旅行は、気圧や気候の変化が症状の悪化につながることがあり、注意が必要である。
NYHA分類Ⅰ~Ⅲ度の安定期にあるコントロールされた慢性心不全は、心臓リハビリテーションの適応があり、心肺機能に応じた運動療法が推奨されている(「心臓リハビリテーションと看護」を参照)。

定期的受診

慢性心不全の治療は、正しい服薬とともに、症状や生活内容をコントロールしていくことである。そのため、患者・家族に対して、具体的な症状の理解や、退院後も定期的な受診を行うことを指導する。また、息切れや身体のむくみが 出現したり、いままでできた日常生活行動に困難が生じたりするなどの症状の ある場合には、食塩制限や活動制限を実施し、すみやかかつ継続的な受診を行うように指導する。

感染の予防

感染症、とくに呼吸器の感染症は心不全を悪化させる。外出から帰ったら、うがいを行う、手洗いを行う、かぜをひいたらすぐに受診をして悪化を防止し、重篤にならないような自己管理行動を促していくことが大切である。
風邪などの感染症は、代謝亢進や発熱を引きおこし、心負荷となり増悪につながる。室内の湿度・温度調節や換気を実施し、上気道感染を防ぐとインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種をすすめる。

心理面の支援

心不全患者はうつ症状に陥りやすく、患者のQOLのみならず、予後にも影響を及ぼすことが報告されている。高齢者では認知症を有する場合や他疾患によって症状が増悪する場合もあるため、患者の支援体制を確認し、必要に応じて臨床心理士や専門医との連携をはかっていく。また、生活の中でのストレスに対してのマネジメント方法を、患者・家族とともに考えていくことも大切である。

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