急性心不全の看護と観察項目・アセスメントや看護目標について学ぼう!

心不全患者の看護

心臓はポンプとして生体組織が必要とする血液を送りだしている。心不全は、すべての心疾患を基礎疾患としておこりうる症候群であり、心臓以外にも腎、肺、内分泌、免疫系なども大きく関与している。
急性心不全
急性心不全とは、「心臓に器質的および / あるいは機能的異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への還流不全をきたし、それに基づく症状や徴候が急性に出現あるいは悪化した状態」をいう。これには、慢性心不全の急性増悪や、急性冠症候群などを原因 として新規発症する場合がある。急性左心不全の重症型は急性肺水腫であり、迅速な対応と適切な治療が行われないと死亡率は高くなる。
慢性心不全
慢性心不全とは、「慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的または相対的に抽出できない状態であり、肺または体静脈系にうっ血をきたし、生活機能に障害を生じ た病態」である。これは、急性心不全からの移行、高血圧性心疾患、弁膜症 心筋症などが原因となって生じる。
心不全患者の看護では、効果的な治療がなされ、心不全の症状や心臓の負荷を軽減し、その病態に合わせた生活が維持できるように支援していくことが大切である。

【心不全の病態】
心不全は、機能が低下した箇所により、左心不全、右心不全、両心不全に分けられそれぞれの病態は以下の通りである。
[1] 左心不全:
左心室の機能障害により、肺循環系では肺うっ血がおこり呼吸困難症状が出現する。
[2] 右心不全:
右室の機能障害により、静脈系にうっ血がおこり浮腫や腹水の出現をみる。
[3] 両心不全:
両方の機能不全である。多くの病態では、左心不全が進行して肺動脈圧が上昇して右心にも負荷がかかり右心不全を引きおこす。

【心不全の症状】
 ⓵.左心不全
・呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難(仰臥位1~2時間後に突然おこる)、咳、喀痰(急性で高度の肺うっ血、肺水腫では、ピンク泡沫状療)、動悸、頻脈、浅呼吸(ときにチェーン-ストークス呼吸を伴う)、肺野での湿性ラ音(高度な場合は喘鳴)、尿量の減少
 ⓶.右心不全
・下腿浮腫、消化管うっ血による食欲不振、頸静脈怒張(上半身45度挙上げに鎖骨上にみとめられれば、右心房圧上昇)、肝うっ血による腫大、疼痛や腹水の貯留

急性心不全の看護

急性心不全はすべての心疾患が原因となるが、心不全の対症療法と同時に、ただちに原疾患の原因治療を行わなくては致命的になる場合が多い。これは、慢性心不全の急性増悪期にもあてはまる。心不全の病態や症状を理解して、看護援助を行っていくことが大切である。

急性心不全のアセスメント・観察項目

  自覚的・他覚的事症状
(1)呼吸困難・起座呼吸・発作性夜間呼吸困難
(2)前胸部絞扼感・息切れ・起座呼吸
(3)チアノーゼ
(4)咳・痰:血液のまじった泡沫状喀痰は肺うっ血・肺水腫の疑い
(5)血圧、心拍数と脈拍(脈拍欠損の状態。交互脈、頻脈、徐脈)
(6)冷感・顔面蒼白・末梢冷感:心原性ショックの疑い
(7)精神的不穏状態:慢性心不全の急性増悪では上記症状に以下があげられる。
(8)頸静脈怒張
(9)消化器症状・肝腫大
(10)中心静脈圧
(11)体重の増加
(12)浮腫の状態(下肢)、胸部X線検査(胸水の有無)
  診察所見および検査データ
(1)心音:II音・ギャロップリズム・IV音
(2)肺野湿性ラ音
(3)心電図
(4)胸部X線所見:肺うっ血 心肥大(心胸郭比)、胸水貯留
(5)動脈血ガス分析: Saoが 90%以下の場合は、肺うっ血・肺水腫の疑い
(6)心エコー図・心駆出率(EF)
(7)血液学的検査(BNP 値 血液一般検査、急性冠症候群を疑う場合は、心筋トロポニン、CK-MB など)
(8)心不全の誘因となる基礎疾患の有無:貧血、甲状腺疾患など
(9)NYHA心機能分類
(10)フォレスター分類、ノーリア分類
(11)キリップ Killip 分類
(12)血行動態モニタリング:重症例の場合はスワン-ガンツカテーテル
  心疾患の既往
:心筋梗塞、弁膜症、心筋症、高血圧、不整脈など
  心不全を増悪させた生活での誘因
慢性心不全の急性増悪をきたした場合、病状とともに生活での誘因について把握を行う。
(1)食生活:ナトリウム、水分、エネルギーの摂取量
(2)活動量、運動量
(3)疲労やストレスの有無
(4)感染症の有無
(5)治療薬の中断
(6)妊娠
  その他の項目
(1)心理状態
(2)日常生活動作の自立度
(3)家族の病気 治療・処置への理解、不安
  日常生活の再調整
急性期から回復期にかけて、日常生活の再調整のために次のような情報を加していく。
(1)病気、治療、生活上の注意点についての理解と受けとめ方
(2)家族、および職場での役割
(3)対処機制:問題やストレスの取り組み方、ストレス解消方法など
(4)自己管理能力
(5)ソーシャルサポートの状況

急性心不全の看護目標

急性期には、循環・呼吸機能の維持を中心に、心身の安定状態の回復を目指した看護が行われる。

【急性心不全の看護目標例】
(1)呼吸・循環状態が安定し、生命の危機状態から回復する。
(2)急性心不全によりもたらされる身体的症状が改善する。
(3)急性心不全によりもたらされる不安が緩和する。
(4)急性心不全に関連する二次的合併症がおこらない(肺炎・尿路感染・前川血栓症など)。
(5)心不全症状を予防する生活習慣を獲得し、早期に社会復帰できる。

急性心不全の看護活動

心不全に伴う緊急処置としては、肺うっ血を軽減し、呼吸困難を緩和することが必要である。

肺うっ血に伴う呼吸困難の緩和

起座位、あるいはファウラー位などの患者がらくに呼吸をできる体位をする。起座位やファウラー位をとることによって、右心に戻る静脈は減少し、肺うっ血は軽減する。また起座位によって横隔膜は下降し、大胸筋や補助呼吸筋の呼吸運動はスムーズになるため、換気量は増加する。また、身体の安静を保ち、心筋酸素消費量の需要を少なくすることが大切である。

酸素療法と気道の浄化

肺うっ血による有効な呼吸面積の減少、および換気・拡散障害によって呼吸困難が生じる。組織への酸素供給を高めるために、酸素吸入が1 PaCO2が上昇している場合は、高濃度の酸素投与は、CO2ナルコーシスをおこすので注意が必要である。肺うっ血が強く、肺水腫が生じて人工呼吸器が装着されることもある。また、咳や喀痰の排出を行って気道浄化を行い、換気障害をできるだけ少なくするように援助を行う。

治療への援助

肺うっ血の治療には一般的にナトリウムと水分摂取量が制限され、また、循環血液量とうっ血を減少させるために、利尿薬・血管拡張薬・モルヒネが用いられる。代表的な利尿薬は速効性ループ利尿薬である。静脈の拡張により前負 荷が軽減し、その後、尿排泄の増加がおこる。血管拡張薬の投与では静脈還流 量が減少し、肺静脈圧の急激な減少や、動脈圧の減少効果がある。モルヒネは、静脈拡張による前負荷の軽減や鎮静効果、呼吸中枢作用による過呼吸の抑制が 効果としてあげられる。
利尿薬の使用により電解質の不均衡をきたしやすくなるため、血清電解質の 検査結果に注意する。低カリウム血症では、筋力の低下や腸管麻痺、不整脈をきたす。低ナトリウム血症では、全身倦怠感、意識障害、吐気、筋けいれんなどをおこすことがある。脱水がおこれば血液の粘稠度が高まり、安静を維持している患者では、静脈血栓や肺梗塞、脳梗塞をおこす危険性もある。とくに心房細動のある患者は、脳塞栓の危険性が高くなる。
心拍出量の減少をきたした場合には、DDE阻害薬やカテコラシン等の強心薬の投与が行われる。ジギタリスが投与される場合は、ジギタリス中毒に注意する。
これらの薬剤で効果がない場合は、大動脈バルーンパンピングや経皮的心肺 補助法、および補助人工心臓などが併用される。非薬物療法では、その他に ペースメーカー、右室と左室を同時にペーシングする心臓再同期療法や、埋め 込み型除細動器カテーテルアブレーションなどの治療が行われる場合がある。
また、急性心不全から慢性心不全への移行時には、ACE阻害薬やアンジオ テンシンII受容体拮抗薬(ARB)、B遮断薬などが用いられる。これらの指示 された時間投与量をまもるとともに、薬剤効果を尿量、心拍数、体重、血液検 査、胸部X線検査結果、呼吸状態症状、浮腫の状態、など全身状態の観察を行い評価する。

心臓の負荷の軽減

心臓の負荷を減らし、心筋酸素消費量の過大な負荷を軽減するためには、心拍数や血圧を変動させる要因を緩和し、個々の患者に応じた日常生活動作の援助を行う。日常生活への看護援助は患者の状態をみながらつねに労作と休息のバランス を考慮することが大切である。排泄のあとも休息時間をとるというような計画 を立案する。身体的な苦痛は、血圧や心拍数の増大につながる。体動・清潔・ 排泄など基本的な日常生活行動の充足をはかり、少しずつ自立していけるように援助を行う。

食事療法への援助

ナトリウムは血液の浸透圧を高め、循環血液量を増し、うっ血を助長するので、摂取を制限する。患者の状態によっては厳しい塩分の制限(3~5g/日)が なされるが、患者は腸管のうっ血による諸症状や、さまざまな処置により、食べる意欲を失っている場合も多い。また、それまでの食習慣で味つけの濃い食事をとっていた患者では、さらに意欲を失わせる結果となる。
制限内での患者の食習慣や嗜好を配慮し、酢などの調味料や香辛料の活用、調味料としてのしょうゆ 1mLをそのまま食膳に添える、一品のみをふつう。味つけにするなど、食事の工夫を行う。食事は生活における楽しみでもあり 一方的に制限の必要性を強調するのではなく、それまでの食生活に応じた具体的な工夫を、患者や家族とともに考えていくことが大切である。
心不全に伴う二次的合併症の予防

  [1] 肺炎の予防
肺うっ血があると、肺炎や気管支炎をおこしやすい。また肺うっ血が改善しないとこれらの疾患は治癒しにくい。肺炎や気管支炎ではさらに呼吸困難が強まり、高熱が持続すれば代謝が亢進するため、酸素消費量が増し、心臓の負担を増す。また、咳は気道内圧を高め、消費エネルギーを増大 させて心臓の負荷を増す。口腔内の清潔を維持し、体位変換時間ごとの深呼 吸や喀痰の排出を促すなどの気道浄化を積極的に行い、呼吸器系合併症の予防 を行う。
  [2] 尿路感染
時間尿測定などのため、多くの場合は膀胱内留置カテーテルが挿入される。また、入浴は心負荷につながるため、状態が安定して許可がで るまでは清拭を行う。また、陰部洗浄を行い、陰部の清潔を保つ。
  [3] 褥瘡の予防
浮腫に加え、安静臥床により褥瘡がおこりやすい。適切な 体位変換と、体圧を軽減するマットレスや体圧分散用具を必要に応じて使用し、褥瘡の発生を予防する。
 [4] 血栓性静脈炎・静脈血栓症
臨床に伴う安静や、利尿薬の投与による血 液の濃縮などが誘因となって、下肢の静脈血栓をおこしやすい。下肢静脈の血流を促進するために、他動的な足関節の背屈運動や下肢の屈曲運動、予防の場 合には血流を促すためのマッサージを行う。これらの運動は、下肢筋力低下の
予防にもつながる。

心理的な援助

呼吸困難や緊急時になされる治療・処置は患者に死の不安・恐怖をもたらす。さらに、低酸素状態はそれだけで不安や不穏状態を強める。急性状況下で苦痛を伴う症状が強い時には、現在なにがおこっており、どのような治療や処置がなされているのかを、患者がどのように理解しているのか十分に確認しながら わかりやすく説明する。患者が感情を表出する場合は、耳を傾けて、あたたかい態度で患者のいだく不安や恐怖を受けとめていくことが大切である。

家族への援助

家族に対して、患者の病状、行われている処置とその目的、今後の見通しを伝え、治療への理解と同意を促す。家庭で病状の管理をしていた場合は、家族が罪悪感を持っていることも考えられる。家族の患者への思いを受けとめ、患者に対するニーズを聞き、希望をできるかぎり取り入れられるように援助する。また、家族の身体的な疲労が強い場合は、休養がとれるように配慮する。

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