認知症の原因と症状を知り、予防・治療の方法を学ぼう!

認知症とは?

認知症とは、いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下していき、複数の認知機能障害によって社会生活に支障をきたすようになった状態をいう。記憶障害・見当識障害・判断力低下などの認知症状が中心となる(これらの症状を中核症状という)となる。

この先は、認知症の疾患情報を中心に紹介していきます。認知症の看護について知りたい方は参考にして下さい。

認知症の症状

記憶障害では、新しく経験したことを記憶にとどめることが困難になる一方、遠い過去の記憶は保たれる傾向がある。
見当識障害は、時間・場所などに関する認識能力が低下するため、自分がどこにいて、現在がいつなのかなどのことがわからなくなった状態である。また判断力が低下するため、ものごとを順序だてて行ったり、計画的に進めたりすることができなくなる。
中核症状は程度の差はあれ、すべての認知症の患者にみられるもので、脳の萎縮(神経細胞の減少)に伴う認知能力の低下・喪失を反映すると考えられる。失語・失認や実行機能の障害もみられることがある。これに、不安・抑うつ・ 興奮・徘徊・不眠・被害念慮・妄想などの周辺症状が加わってくる。認知症の重症度と周辺症状の重症度とは必ずしも一致しない。

疫学

認知症の症状

患者は 2010年の時点で200万~220万人程度と推定され、2025年には 300万人にも達すると推計されている。
認知症を有する高齢者は、65歳以上の高齢者全体では数%にすぎないが、年齢が上がるにしたがって頻度が上昇する。
65~70歳では5%程度であるが、70歳以上では7~14%となり、80歳以上では27%もの人が認知症を呈するといわれている。

認知症の原因

以前は脳梗塞などが原因となる脳血管性の認知症とアルツハイマー型の認知症がほぼ同じ割合と考えられてきたが、現在はアルツハイマー型認知症が最も多く、ついで脳血管性認知症、レビー小体型認知症も多いと考えられている。アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の合併のように、2つ以上の認知症の共存しているものを混合型認知症とよぶ。
高齢者においては、意識障害・せん妄、加齢による認知機能の低下、うつ状態による仮性認知症などと区別しにくい場合もあるので、注意が必要である。そのほかに、アルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性疾患をはじめ低酸素脳症、髄膜炎・脳炎などの感染症、甲状腺疾患、肝性脳炎・低血糖性 脳症、慢性硬膜下血腫などが原因となるが、認知症の一部には治療可能なものもあるので、早期に診断し、原因疾患を治療することが重要となる。
とくに甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症などの内科疾患や、慢性硬膜下血腫・脳腫瘍・正常圧水頭症などは重要である。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、高齢者におこり認知症を示す最も一般的な疾患である。多くは散発性にみられるが、家族性のものも5%程度ある。40~50歳代以降に発症しゆるやかに進行する。以前は 65 歳以前に発症した場合をアルツハイマー型認知症、それ以後に発症した場合をアルツハイマー型老年認知症(痴呆)と分けていたが、この2つは同じような病理学的所見を呈するので両者をまとめて アルツハイマー病あるいはアルツハイマー型認知症とよぶようになっている。

記憶障害・記銘力障害などをもってゆるやかに発症するが、その他のさまざまな認知機能障害も加わって日常の生活に支障をきたすようになる。脳などの 局所病変による局所神経症候がみられないのがふつうであるが、脳血管性認知症との混合型の認知症では、局所徴候がみられることもある。
アミロイドBタンパク質というタンパク質が脳内の神経細胞外に蓄積し、これに神経突起が取り囲んでできる、老人斑といわれる「しみ」のような物質が形成される。また神経細胞内に神経原線維変化がみられ、神経細胞死の原因になるとされる。脳の病理学的所見では、大脳皮質において神経細胞がびまん性に消失し、神経膠細胞が増加している。

一方、軽度の記銘力低下・言語機能低下など軽度の認知機能障害を呈するが、全般的な認知機能は正常で、認知症のレベルにまでは達していない軽度認知機能障害とよばれる病態があることが知られるようになった。60歳ないし65歳以上でのその有病率は、11~17%とされている。一部(1年あたり5~15%)は認知症(アルツハイマー型認知症)に進展するが、長期間記銘力障害のみにとどまる場合もある。

アルツハイマー型認知症の症状

初期には、記銘力障害(とくに近時記憶の障害)、見当識障害、不安、抑うつなどが症状の中心となる。遠隔記憶は比較的保たれるため、昔のことは思い出すことができる。しかし病気が長期化すると、遠隔記憶もおかされる。
後述の脳血管性認知症と比較すると、早期から性格変化がみられ、自分は病気だという認識がない(病識の欠如)のが特徴である。発症後数年経過すると、記憶障害が顕著になるとともに、しだいに判断力が失われ、言語の表出・理解や視空間認知の障害があらわれる。また失語・失行・失認や幻覚・ 妄想などの精神症状、錐体外路症状やミオクローヌスなどの不随意運動も出現してくる。また、暴言・暴力、俳徊などの問題行動もみられるようになる。着衣・入浴・トイレなどにも介助が必要になってくる。

末期には人格が著明にくずれてくるとともに、無言・寝たきりの状態となる。麻痺や感覚障害など局所神経症状は通常みとめられない。全経過は5~10年程度で、嚥下性肺炎などの合併症で死亡することが多い。

アルツハイマー型認知症の検査

頭部CT・MRIで、頭頂葉・側頭葉に明らかな脳の萎縮がみとめられる。とくに海馬を中心とした側頭葉内側面の萎縮が、早期から顕著である。脳血流SPECTでは頭頂葉・側頭葉内側に明らかな血流低下がみとめられるが、早期から後部帯状回・前部の血流低下がみられる。
また脳脊髄液検査では、タウタンパク質の上昇が確認される。近年、大脳皮質におけるアミロイド沈着の画像検査が可能となり、診断への応用が期待されている。
認知症の程度を検査するために、改訂長谷川式簡易知能評価スケール、ミニメンタルステート検査(MMSE)、ウェクスラー成人知能検査改訂版(WAIS‐Ⅲ)などがよく用いられる。

アルツハイマー型認知症の治療・予防

現時点では病気の進行をとめる治療法はない。治療にはコリンエステラーゼ阻害薬が用いられる。
非薬物療法も重要である。残存機能を維持しながら、問題行動・精神症状の軽減・予防をはかり、対人交流の促進、情緒の安定を通じて、意欲を向上させていくことが重要で、これは介護負担の軽減にもつながる。

アポリポタンパク質Eの遺伝子(ApoE)の異常が、アルツハイマー病の発症に関係があるといわれている。アルツハイマー病患者では、症状が出現する20年以上前から脳内にアミロイドBタンパク質の沈着が始まっているということがわかってきており、今後は予防も重要になっていくものと考えられている。糖尿病・高血圧・肥満や運動不足などの危険因子を治療していくことが、予防に重要であることがわかりつつある。

脳血管性認知症について

脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳内出血など脳血管障害に伴っておきる認知症をいう。すなわち、脳梗塞や脳内出血・クモ膜下出血などによって直接脳組 織がこわれ、あるいは血流障害によって十分な酸素や栄養素がいきわたらないことなどが原因となり、もの忘れや認知症をきたす病態である。老年期の認知症の約30%を占め、60~70 歳代に多い。高血圧症や脳血管障害の既往があることが多く、血圧の変動のみられる患者に多い。

認知症状のほかに、アルツハイマー病と違って局所神経症状が合併しやすいのが特徴である。しかし、脳血管性認知症はアルツハイマー病と合併する率も高く(約30%)、両者の境界は必ずしも明らかでない。

脳血管性認知症の症状

病変部位に対応して、麻痺・嚥下障害・構音障害や感覚障害などがあらわれる。早期から歩行障害も合併しやすく、尿失禁もおこる。これらがアルツハイマー病との重要な鑑別点になる。
認知症の性質は、アルツハイマー病が全般的な認知能力の低下をおこすことが多いのに対して、脳血管性認知症では、初期のうちは一部の認知機能は低下するものの、他の機能は保たれているため、まだら認知症ともよばれる状態を呈する。人格はある程度保たれる。

経過もアルツハイマー病では症状が徐々に悪化するのに対して、脳血管性認知症では新しい病変が形成されるたびに悪化する。そのため段階的な悪化を示すことが多いが、ゆるやかに進行する経過のものもある。また症状が日や時間 によって変動し、しっかりした日もあれば、まったく話の通じない日もある。
感情面でも動揺があり、感情失禁や抑うつ症状を示す患者が多い。

脳血管性認知症の検査

頭部CT・MRIで大脳白質・大脳基底核・視床などにラクナ梗塞の多数の便塞病変や、白質に広範囲に虚血領域がみられる。また、単一ないし少数の病変でも海馬・視床の病変や、主冠動脈の灌流域・境界領域の病変、中程度以上の大きさの脳内出血も、脳血管性認知症の原因となりうる。
脳血流シンチグラフィー(SPECT)では、脳の血流がまだら状に低下したり、前頭葉の血流が低下したりしている所見をみとめることが多い。

脳血管性認知症の治療・予防

新たな病変の発生が認知症悪化の原因になるので、その予防が重要であり、脳血管障害の予防に準じた治療を行う。脳梗塞の予防のためには抗血小板薬(チクロピジン塩酸塩・アスピリンなど)が用いられる。心房細動などによる心
原性の脳梗塞が疑われる場合には、ワルファリンカリウムなどの抗凝固薬が用いられる。
あわせて、糖尿病や高脂血症・高血圧など危険因子となる基礎疾患の治療が重要である。とくに高血圧、および血圧の変動の治療は重要である。過度の飲酒・喫煙も避ける必要がある。アルツハイマー病を合併している患者では、婦 酸ドネペジルが用いられる。

レビー小体型認知症について

レビー小体型認知症とは、大脳・脳幹の神経細胞内にレビー小体とよばれる物質が蓄積し、認知症やパーキンソン症状を呈する疾患である。進行性の皮質性認知症を示す。アルツハイマー病、脳血管性認知症についで多く、成人の認知症患者の約20%を占めるとされ、2:1で男性に多い。認知障害だけでなく、パーキンソン症状のような運動障害も併発することがある。初老期・老年期に発病することが多いが、40歳前後で発病する例もある。パーキンソン病では中脳を中心にレビー小体が出現するのに対して、レ ビー小体型認知症では大脳皮質全体に出現する。

パーキンソン病にも認知症が伴うことがあり、認知症の発症がパーキンソン病の発症前、あるいはパーキンソン病発症後の1年以内のものを、レビー小体型認知症(DLB)に含め、パーキンソン病が1年以上認知症に先行する場合は認知症を伴うパーキンソン病という。しかし、両者では病理学的変化の脳内進展が異なるものの、病態が共通である
ため、両者を合わせてレビー小体型認知症とよぶようになっている。

レビー小体型認知症の症状

もの忘れ・幻視などをもって発症し、徐々に進行する認知症状を呈する。
生々しい具体性を持った幻覚が繰り返しおこり、せん妄などを呈する。認知機能が日によって変動することが多いのも特徴である。
パーキンソン病に類似した運動障害や立ちくらみ・排尿障害などの自律神経症状がみられることがあるが、認知症のみでパーキンソン症状の目だたないことも多く、アルツハイマー病との鑑別が重要である。レム睡眠行動障害がみられることがある。

レビー小体型認知症の検査

脳血流SPECTで後頭葉優位の血流低下がみられる。パーキンソン病と同様、MIBG心筋シンチグラフィーで心臓交感神経の脱落所見がみとめられる。

レビー小体型認知症の治療・予後

認知症に対しては、塩酸ドネペジルなどコリンエステラーゼ阻害薬が有効なことがある。パーキンソン症状に対しては、レボドパやドーパミン受容体刺激薬のような抗パーキンソン病薬が有効であるが、幻覚やせん妄を誘発しやすいので注意が必要である。レム睡眠行動障害に対しては、クロナゼパムが有効である。
徐々に進行して認知症が悪化し、アルツハイマー病に比較すると早期に寝たきりになることが多い。

前頭側頭型認知症について

前頭側頭型認知症は人格変化、行動や意欲の異常、言語障害などを呈し、進行性の認知症をきたす神経変性疾患で、前頭葉や側頭葉の限局性の萎縮を特徴とする。
病理学的な検討からピック病、前頭葉変性症、認知症を伴う運動ニューロン病など、臨床像の類似したいくつかの疾患が含まれていると考えられている。40~60歳代に発症し、発症年齢はアルツハイマー病に比較するとやや若いことが多い。認知症の10~20%を占めるとされる。

前頭側頭型認知症の症状

人格変化や情緒障害をもって発症することが多く、初期にはアルツハイマー

-病に比較して記銘力低下の程度は軽い。また自発語の減少や、言葉が思い出せない、言葉にできない、言葉の意味の理解障害など、言語の症状がみられる。
経過とともに人格・行動異常は進行し、自発性や意欲の低下が目だってくる。
末期には高度な認知症を呈し、無言・無動となる。

前頭側頭型認知症の検査

頭部 CT・MRIで側頭葉・前頭葉などの限局性の脳萎縮をみとめ、SPECTでも前頭葉・側頭葉などの血流低下がみられる。

前頭側頭型認知症の治療

原因はまったく不明で、現在のところ治療法はない。ドネペジル塩酸塩などアルツハイマー病に準じた治療を行うが、かえって症状の悪化をもたらすことがあるので注意が必要である。2~8年で衰弱し死亡することが多い。

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