多発性硬化症の症状や検査・治療方法を学び、予後を考えよう。

脱髄疾患とは?

神経線維の軸索を取り巻く髄鞘が変性・脱落する病的状態を脱髄といい、中枢神経系に脱髄病変がおきる疾患を脱髄疾患という。代表的な疾患として、多発性硬化症と急性散在性脳脊髄炎がある。

多発性硬化症について

多発性硬化症は中枢神経の脳・脊髄と、とくに視神経に脱髄病変(脱髄斑または脱髄プラーク)を生じ、経過とともに再発と寛解を繰り返しながら多発する疾患である。一般に末梢神経は障害されない。脱髄疾患では有髄神経の髄鞘がこわれるため、神経伝達に障害をきたす。
有病率(患者数)は人口10万人あたり8~9人程度であり、全国で約12000人の患者がいると推定されている。

多発性硬化症の発症病理と臨床経過

原因は不明であるが、病変部にはリンパ球をはじめとする白血球が多くみれるた、髄鞘が白血球によって攻撃されて脱顔がおきる自己免疫的な機序が想定されている。
多発性硬化症は15~50歳の若年~中年の成人に発病し、平均発病年齢のピークは20~30歳である。60歳以上で発病することはまれである。1:3~4程度と女性に多い。

※ 脱舗斑:脱髄疾患でみられる脱髄病変のこと。時間を経た脱髄斑が肉眼的には多数の硬化巣としてみとめられるため、「多発性硬化症」の名前がある。

臨床的な特徴は、
⓵.発症年齢が15~50歳と幅があり、
⓶.中枢神経の2つ以上の病巣による症状を示し(空間的多発性)、
⓷.これらの症状が時間的経過に よって寛解と増悪を繰り返す(時間的多発性)、
といった点である。過労・ストレス・かぜ・出産などが引きがねとなって、再発がおきやすい。いったん再発すると、症状は発病後1週間以内にピークになり、その後2~ 3日から2~3週間で軽快するが、回復がより遷延することもある。無治療でも1か月ほどで自然に改善することがあるが、後遺症を残すこともある。

多発性硬化症の病型分類

臨床経過から3つの病型に分類される。
⓵.再発寛解型
多くの患者では通常、再発と寛解を繰り返しながら、に経過していく。
⓶.一次性進行型
再発と寛解がはっきりしないが、最初から徐々に症状が悪 化していき、日常生活動作が低下して予後不良の経過をとる。
⓷.二次性進行型
初期には再発と寛解を示したのち、しだいに進行性の経過をとる。
再発を繰り返しながらも経過のよい患者がいる一方、何度か再発したあと、短い間に寝たきりとなり、予後不良の経過をとる患者もいる。一部に橋本病や バセドウ病のような甲状腺疾患、関節リウマチやシェーグレン症候群などの膠原病を合併するものもある。

多発性硬化症の症状

症状は病変部位によって異なるが、とくに眼球のすぐ後ろに病変を生じる球後視神経炎をおこしやすく、75%に視力低下や視野欠損がみられる。大脳や脊髄の病変によって中枢神経内の運動路に障害が生じると、片麻痺・対麻痺や四肢麻痺がおきる。中枢神経の感覚路に脱髄巣があると、四肢や体幹にしびれ・感覚低下などの感覚障害を生じる。脳幹の眼球運動神経核を結ぶ白質線維が障害されると、複視や眼球運動障害がおこる。小脳に病変がある場合には、小脳性失調症、眼振や構語障害が出現する。麻痺や小脳症状、ときには感覚症状の影響で、さまざまな型の歩行障害が出現する。頻尿や膀胱直腸障害がみられることもある。
特殊な型の多発性硬化症として、視神経炎と、対麻痺をきたす横断性脊髄炎 がほとんど同時に、あるいは1~2週間前後しておきるものをデビック型とよぶ。また近年、強い視力障害と、3椎体以上にわたるような長い脊髄病変を持つ病型のものが、視神経脊髄炎(NMO)として認識
されてきた。臨床像や治療が一般の多発性硬化症と異なると考えられている。

多発性硬化症にみられる特徴的な症状
本文で述べた以外にも、多発性硬化症に特徴的な症状がいくつかある。有痛性強直性けいれん発作は、自動的あるいは他動的に足を曲げたりするときの刺激が発作を誘発し、痛みやしびれを伴って一側あるいは両側の下肢が強直発作をおこすものである。頸部を前屈させると、背部・脊柱に沿って上下に電撃的な放散性疼痛がみられるレルミッテ徴候も特徴的である。また長時間の入浴や、夏季の炎天下での体温上昇に伴って、一時的に悪化する現象もしばしばみとめられる。

多発性硬化症の検査・診断

神経学的診察で中枢神経障害に基づく他覚的異常や、特徴的な神経学的検査所見、病歴・臨床症状、および画像検査(頭部のMRI検査)で主として大脳白質に2か所以上の異なった病巣の存在を確認することが診断の基本になる。脳脊髄液検査では、総タンパク質量と白血球数(リンパ球)の増加がしばしば みとめられる。再発時には炎症を反映して髄液中のIgG が上昇し、髄液中でのIgG の産生を反映するIgG 指数(IgG index)も上昇することが多い。
ほかに視覚誘発電位・聴覚誘発電位・体性感覚誘発電位などの検査によって、視神経・大脳白質・脳幹などの視覚伝導路・聴覚伝導路・体性感覚伝導路などの機能障害を検出する。

多発性硬化症の治療・予後

急性期には、なるべく早期にメチルプレドニゾロンの点滴静脈内注射にいっ
ステロイドパルス療法が行われる。急性期を過ぎると、リハビリテーションをはじめ、対症療法として有痛性強直性けいれんに対してカルバマゼピンが、手・足のつっぱり(けい縮)に対してバクロフェンなどの抗けい縮薬が用いられる。排尿障害に対しても対症療法が行われる。
生命予後は平均30年前後と必ずしもわるくないが、再発と寛解を繰り返しながら障害が重くなるので、再発の予防が重要になる。インターフェロン B1)が再発予防に用いられる。日常生活上の注意として、感染・ストレス・過労などを避けることも重要である。

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