脳腫瘍の原因や症状を知り、治療方法を学ぼう!

脳腫瘍とは?

頭蓋内に発生する新生物を脳腫瘍と総称する。10万人あたりにつき10人余 りの割合で発生する。その発生母地)は、神経細胞や神経膠細胞などからなる脳実質、硬膜などの髄膜のほか、血管、脳下垂体、先天性遺残組織、頭蓋骨などである。これらに原発性に発生する場合(原発性脳腫瘍)と、他の部位から転移して生育する場合(転移性脳腫瘍)とがある。

また、他の臓器と同様に組織学的に悪性腫瘍と良性腫瘍がある。男女差に関しても組織型によって違いがみられ、男性に多く発生する腫瘍(胚細胞腫は男性に3倍高い発生率)や、女性に多く発生する腫瘍(髄 膜腫は男性の3倍の発生率)がある。年齢差についても特徴がみられ、小児で は神経膠腫・髄芽腫・胚細胞腫などが多くを占めているが、成人になるとそれ らの割合は減少し、かわって髄膜腫・下垂体腺腫・転移性脳腫瘍などの割合が高くなる。なお、例外を除いて原発性脳腫瘍は頭蓋外には転移しない。

脳腫瘍の分類と発生頻度

全脳腫瘍のうち、原発性のものは 80%前後、転移性のものは 20%前後である。原発性脳腫瘍は、その発生母地から脳実質内腫瘍と脳実質外腫瘍に分けられる。
脳実質内腫瘍には神経膠細胞から発生した神経膠腫などがあり、実質内を浸潤性に増大する。脳実質外腫瘍には髄膜から発生した髄膜腫や、下垂体に由来する良性の下垂体腺腫などがある。個別の原発性脳腫瘍の頻度は髄膜腫、神経膠腫、下垂体腺腫の順で、3者で全体の約 70%を占めている。
部位別では、脳腫瘍全体のうち約半数が大脳半球に発生している(髄膜腫・神経膠腫に限れば大脳半球に約80~90%発生している)。ついで下垂体部、小脳橋角部、小脳、脳幹の順となる。おおまかにいって、成人では小脳テント上(大脳)の脳腫瘍が多く、新生児を除く10 歳以下の小児ではテント下(小脳・脳幹)の脳腫瘍が多い。

脳腫瘍の症状

脳腫瘍の症状は、腫瘍の存在部位による局所症状(内分泌症状を含む)と、腫瘍の存在・増大による頭蓋内圧亢進症状とに大別できる。

⓵.局所症状
大脳半球の腫瘍では、病巣と反対側の片麻痺や感覚障害・視野 障害、失語症などがみられる。下垂体や視床下部の腫瘍では、巨人症やクッシング症候群などの内分泌症状を呈する。けいれん発作も重要である。成人ではじめてのけいれん発作がみられた場合 などは、脳腫瘍を念頭においた検索が必要である。小脳の脳腫瘍では、平衡障害やめまい・嘔吐などを呈する。
⓶.頭蓋内圧亢進症状
脳腫瘍が増大するにつれて徐々に発現する。すなわち、慢性の頭蓋内圧亢進症状で、慢性頭蓋内圧亢進の三徴(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)を呈することが多い。

脳腫瘍の治療

多くの場合、腫瘍摘出手術が行われる。頭蓋内圧の減圧の意味でも、腫瘍塊を除去する必要がある。しかし、腫瘍の部位や性質、浸潤度などの状態によっては、必ずしも全摘出が望めないことがある。そのような場合は、腫瘍を全協 出することを目的とするのではなく、手術後・治療後の QOL(生活の質)を考慮し、手術による神経症候の悪化を極力避けながら、部分摘出や、病理学的影 断確定のための生検を行うにとどめることもある。一般的に、脳実質内腫瘍では浸潤度の点で全摘出が困難な場合が多い。脳実質外腫瘍は脳実質を圧迫するように成長するので(脳実質を傷つけることなく)。全摘出も可能な場合があるが、存在する部位や大きさなどの問題もある。

また、合併する水頭症に対して V-P シャント術(脳室腹腔短絡術)を併用する場合がある。腫瘍が悪性である場合などは、手術後に放射線療法・化学療法・免疫療法などの補助療法を行うことが多い。
頭蓋底部など脳深部で手術の危険度が高い部位に発生した小さな腫瘍(聴神経腫瘍など)には、定位放射線手術(ガンマナイフなど)が行われることが多い。

脳腫瘍の予後

脳腫瘍の予後は組織学的悪性度に大きく依存し、良性腫瘍ではほぼ全治も期待できるが、悪性腫瘍ではさまざまな治療法を組み合わせても予後は不良である。とくに、転移性脳腫瘍の場合の予後は不良である。手術そのものによる死 亡危険率はせいぜい数%であり、他臓器の手術と同程度である。

おもな脳腫瘍の種類

脳腫瘍には由来する細胞・組織に応じて、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腫瘍、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫などがある。

神経膠腫(グリオーマ)について

神経膠腫(グリオーマともよぶ)は、脳の支持組織である神経膠細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍であり、代表的な脳腫瘍である。いわゆる悪性腫瘍であり、脳実質内に浸潤性に発育する。脳実質のあらゆる部位に発生しうるが、成人では大脳に、小児では小脳に多く発生する。
神経膠腫も病理組織学的に細かく分類されており、最も悪性度の高い膠芽腫(神経膠芽腫)から、良性腫瘍に近い治療成績の得られるある種の星状細胞腫(毛様細胞性星細胞腫)まである。
治療法の進歩に負うところも大きいが、膠芽腫の5年生存率が 10%未満であるのに対して、星状細胞腫全体の5年生存率は 65%前後である。

神経膠腫(グリオーマ)の症状

症状として、脳の局所症状、すなわち片麻痺や失語症などのほか、けいれん発作、頭蓋内圧亢進症状などを呈する。治療・予後神経膠腫は浸潤性に発育するため、全摘出をすることはむずかしいが、治療の第一選択は開頭手術による腫瘍の摘出である。腫瘍の浸潤によって正常な神 経細胞そのものが障害されているので、治療によっても症状の改善は見込みにくいが、腫瘍塊を除去することによって頭蓋内圧も緩和され、脳浮腫も軽減するので、見かけ上の改善は期待できる。予後は不良のことが多い。
補助療法として、放射線療法・化学療法・免疫療法が併用されることが多い。

髄膜腫について

髄膜腫は、脳をおおう髄膜から発生する腫瘍である。基本的には脳内に浸潤することなく、脳を外側から圧迫するようにゆるやかに発育する。病理組織学 的にもいわゆる良性腫瘍がほとんどであり、発生母地を含めて全摘出ができれば治癒も十分に期待できる。髄膜のあるところなら頭蓋内や脊髄内のどこにでも発生しうる。成人に多い腫瘍である。

髄膜腫の症状

慢性の頭蓋内圧亢進症状や、けいれん発作を示すことが多い。片麻痺や失語症などの脳局所症状は比較的軽いことも多い。症状も単に圧迫によって生じていることが多いので、摘出することができれば神経症状の改善、完治が期待できる。腫瘍がかなり大きく成長しても、症状がないか、軽度の場合もめずらしくない。治療開頭・腫瘍摘出手術が基本である。補助療法は必要としないことが多いが、小さな腫瘍では定位放射線治療が考慮される場合もある。

下垂体腺腫について

下垂体腺腫は代表的な下垂体腫瘍で、下垂体前葉から発生する腺腫)である。腫瘍がホルモンを産生するかどうかによって、ホルモンを産生する機能性腺腫と産生しない非機能性腺腫に大別される。頻度順では、非機能性(非ホルモン産生)腺腫が最も多く(下垂体腺腫の半数 弱)、プロラクチン(PRL)産生腺腫、成長ホルモン(GH)産生腺腫、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生腺腫、甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生腺腫であり、そして、その他のホルモン産生腺腫がある。いずれも、病理組織学的には良性であることが多い。

下垂体腺腫の症状

腫瘍が産生するホルモンによる過剰内分泌症状と、腫瘍が増大することによる周囲脳組織への圧迫症状(非機能性腺腫の場合の圧迫による下垂体前葉機能低下や、おもに視神経症状とがみられる。
⓵.過剰内分泌症状
プロラクチン産生腺腫では、プロラクチン過剰分泌による無月経・乳汁分泌症候群がみられる。成長ホルモン産生腺腫では、巨人症や 末端肥大症がみられる。副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫では、クッシング病をきたす。
⓶.圧迫症状
腫瘍が大きくなり、直上の視神経交叉(視交叉)部を圧迫すると、本症に特徴的な両耳側半言を呈する(> 86ページ図 3-6参照)。非機能性腺腫では、下垂体前葉が圧迫されることによって前葉ホルモン全般の分泌低下がみられることがある。

下垂体腺腫の治療

手術的に腫瘍を摘出する。経蝶形骨洞(手術)法が多用されるが、開頭手術による場合もある。とくにプロラクチン産生腺腫の場合には、薬 物療法(ブロモクリプチンメシル酸塩)が有効であることが多い。ガンマナイフなどの定位放射線手術が行われることもあるが、これは手術後 の補助療法としての場合が多い。
手術後は、ホルモン分泌異常、とくに抗利尿ホルモン)(ADH)の分泌障害に よる尿崩症の発症に対する注意が必要である。尿崩症は低比重の尿が多量に排 泄されるのが特徴で、放置すれば急速に極度の脱水状態に陥る。水分平衡の計 算上の管理とともに、体重測定を定期的に行って監視する必要があり、抗利尿 ホルモンも適宜使用される。その他のホルモンも不足があれば補充療法を行う。
経蝶形骨洞手術では、手術後の鼻かみ動作を控えることも必要となる。

聴神経鞘腫について

聴神経鞘腫は、内耳道内の前庭神経のシュワン細胞から生じる。小脳と橋がつくるすき間(小脳橋角部という)にできる代表的な腫瘍で、病理学的には良性である。中高年や女性に多い。

聴神経鞘腫の症状

発生母地である聴神経の症状と、腫瘍の増大に伴って近接している顔面神経や三叉神経の麻痺症状、すなわち聴力低下・耳鳴り・めまい・顔面麻痺・顔面 感覚低下、さらに運動失調などの小脳症状がみられる。腫瘍が大きくなると、脳幹の圧迫が進行する。

聴神経鞘腫の治療

手術的に腫瘍の摘出を行う。腫瘍が小さいときは、定位放射線手術(ガンマナイフ治療など)を行うことが多い。
手術後は、聴神経をはじめ、密接する顔面神経などに障害が残ることがある。閉眼不能に角膜反射の消失が加わって、角膜潰瘍や角膜炎などをおこしやすいので、そのような場合は、角膜保護に対する注意が必要である。小脳症状を残す場合などもある。

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