呼吸障害に対する看護と観察(アセスメント)や看護目標を知ろう!

呼吸障害のある患者の看護

呼吸障害は、脳幹部にある呼吸中枢の障害による中枢性呼吸障害と、骨格筋や横隔膜の障害による末梢性呼吸障害に大別される。それぞれ原因疾患が異なるので、経過や予後、症状に合わせた適切な援助が必要である。中枢性障害のある患者は通常、意識障害を伴っており、死に直面していることが多いため、家族の心情に配慮して最後を患者とともに過ごせるような環境を整える必要がある。また重症筋無力症であれば、徐々に状態が悪化していき、死に対する恐怖感をいだいている。適切な処置と十分な説明を行い、生きる希望・意欲が維持できるように援助していく。患者にとって最後の心のよりどころ家族であり、家族に対する配慮も忘れてはならない。

呼吸障害のアセスメント・観察項目

 [1] 呼吸障害の原因
中枢性呼吸障害か末梢性呼吸障害か、さらにその原因疾患はなにかを把握することが重要である。中枢性呼吸障害であれば、脳幹部の病変や脳ヘルニアの可能性が考えられる。末梢性呼吸障害では、横隔膜の厚吉、呼吸筋の障害をおこす重症筋無力症やギランバレー症候群などがある。
中枢性呼吸障害は急性発症であることが多いため、原因をアセスメントすると同時に呼吸状態とその変化、ならびにバイタルサインを観察し、次におこるべき変化を予測しながら看護を行うことが重要である。ギランバレー症候群は発症が亜急性であるが、呼吸機能にも障害が及ぶ場合があるため、注意しなくてはならない。
末梢性呼吸障害は進行がゆるやかであるが、疾患によっては急性増悪の可能性もあるため、つねに観察して異常を早期に発見することが必要である。また誤嚥や分泌物の貯留による閉塞性呼吸障害がおこることも予測しておく。
 [2] 呼吸の状態
正常な呼吸は1分間に15~20回くらいで規則的なリズムをきざむ。吸気時間と呼気時間比は1:1.5~2である。呼吸の異常は、回数・リ ズム・深さにあらわれるので、綿密な観察が重要である。
⓵.中枢性呼吸障害時:次のようないくつかの異常呼吸があり、いずれも生命の危険を示す。
 (1)チェーン-ストークス呼吸:
無呼吸と過呼吸が交互におこる呼吸。10~60秒の無呼吸のあと、浅い呼吸が出現してしだいに振幅が大きくなり、最大に達すると、また浅くなって無呼吸になる、という周期を繰り返す。
 (2)ビオー呼吸:
突然始まり、突然終わる頻呼吸と無呼吸
 (3)失調性呼吸:
リズム・呼吸の深さも不規則
 (4)中枢性過呼吸:
1分間に24回以上の過呼吸が特徴
⓶.末梢性呼吸障害時:呼吸筋の筋力低下や麻痺によって胸壁の動きが制限されることが多い。リズムは規則的であるが、呼吸が速い。
 [3] 全身の状態
末梢性呼吸障害は原因疾患があるにもかかわらず、自覚症状 を言葉で表現するのがむずかしいことがある。また発症も急激でない場合があるため、全身状態の観察を行って、わずかの変化にも気づくことが重要である。
⓵.呼吸障害:血液ガス、チアノーゼ、咳の有無や痰の有無)、発熱(肺炎の合併など)、胸郭の動き
⓶.循環障害:血圧の異常、頻脈、体液バランスの異常や、易疲労感(脱力、疲れやすさ)、精神症状の不安定など
 [4]原因疾患による症状の観察
原因疾患の病態の悪化は、二次的障害」、呼吸障害に進展することも多いため、運動障害・感覚障害や、嚥下障害、障害などとともに、その有無と程度を観察する。
 [5]検査結果
血液の検査データ(血液ガス分析結果(動脈血酸素分圧Po。動脈血二酸化炭素分圧Pacop)、動脈血酸素飽和度spo2、生化学検査、一般血液検査)、呼吸機能、胸部X線撮影、心電図など

呼吸障害の看護目標

脳は酸素とグルコース(ブドウ糖)への依存度がきわめて大きい臓器でありしかもそれらをほとんど備蓄することができないため、呼吸障害や循環障害の影響を非常に受けやすい。数分間脳への血流が途絶えただけで、脳細胞は不可逆的な障害を受け、死にいたる。呼吸停止または心臓停止がおこった場合には、いかに迅速に適切な処置が行えるかに救命のカギがある。

看護目標例
(1)呼吸障害が早期に発見され、適切な処置が行われて呼吸機能が維持される。
(2)呼吸器合併症が予防され、呼吸障害をおこさない。
(3)患者・家族の不安が増強せず、回復に向かうことができる。

呼吸障害に対する看護活動

呼吸障害では、異常の早期発見と適切で迅速な対処が不可欠である。日ごろから救急カートの位置や、物品の使用方法を把握しておくことが重要である。
また患者や家族は不安をつのらせているので、精神的な配慮も忘れてはならない。呼吸支援チーム(RST)と協力していくことも必要である。

脳の酸素・グルコース依存度  まめちしき。
酸素とグルコースは、細胞のエネルギー(ATP)産生に不可欠である。脳は体重の約2%を占めるにすぎないが、全酸素消費量の実に約20%を消費している。また脳はエネルギー産 生にグルコースしか利用できず、グルコースをため込むこともほとんどできない。そのため、脳への血流が途絶えると、低酸素脳症から数分間で脳の神経細胞は不可逆的な障害を受け、血流停止がさらに続くと、すみやかに死にいたる。
障害を防ぎうる時間は3~5分以内といわれている。たとえば、心筋梗塞、重症の不答(心室細動)などによる血流停止で時間がそれ以上経過すると、たとえ救命しえたとしてもさまざまな障害が残ることとなる。これを蘇生後脳症という。

急性期における援助

呼吸の援助
呼吸障害の程度に合わせた援助を行う。脳の病変などによる中枢性呼吸障害の場合には、急激な発症によって家族も動揺していることが多いので、処直を行うことはもちろん、家族への説明も重要である。末梢性呼吸障害では、徐々に呼吸状態が悪化したり、嚥下状態の低下から誤嚥をおこしたりして呼吸障害をきたすこともあるため、状態に応じた援助が必要である。
 [1] 気道の確保
頭部の後屈、顎先の挙上、または下顎の挙上を行う。舌根沈下時には枕は使用せず、肩枕をして顔を横に向け、あるいは下顎を前方に挙上 する。ただし、頸椎損傷時には頸部の伸展は禁忌である。義歯は外す。
 [2] エアウェイの挿入
通常はエアウェイは鼻腔に挿入するが、意識レベルの低下している場合や、嘔吐反射がないときは、口腔からの挿入を選択することもある。
 [3] 気管挿管
気道確保によっても自発呼吸が不十分なときに行う。その前に、バッグバルブマスク(アンビューバッグ)による呼吸補助を試みる。それで改善しないときは挿管になるので、救急カートや必要物品の準備をしておく。挿管後は正しい位置に留置されているかを確認し、記録する。カフの空気もれの有無、胸郭の動き、呼吸音などの観察を行う。
 [4] 酸素投与
急性期を過ぎて動脈血の酸素化が低い場合は、医師からの指示を待って、指示された酸素量を確実に投与する。投与法には経鼻カニューレ、フェイスマスク、リザーバーマスクつきフェイスマスクなどあるので、それぞれの特徴を理解して指示どおりに行う。酸素投与後は、動脈血酸素飽和度spo2などの変化を観察する。筋萎縮性側索硬化症など疾患によっては、酸素 投与量を少なくすることがあるので、CO2ナルコーシスなどを考えて意識状 態も観察していく。
 [5] 人工呼吸器
呼吸停止時や自発呼吸が弱いとき、あるいは肺機能障害などで十分な換気が得られないときは、人工呼吸器を装着する。装着後は、医師から指示された設定条件で作動していることを確認する。モード・酸素濃度・呼吸回数・気道内圧・アラーム設定などを定期的に確認する。アラームが鳴ったときには、どのような異常かを必ず確認する。気道分泌物の吸引は頭蓋内圧を上昇させることもあるので、注意が必要である。自発呼吸のある患者では、人工呼吸器との不調和などおこすことがあるので、医師に報告する。

合併症の予防
吐物や分泌物による気道閉塞、ひいては窒息を防ぐことが重要である。吐物による誤嚥性肺炎にも注意する。自力で分泌物を喀出できないときは、適宜吸引を行う。口腔内を清潔に保つことも、肺炎予防には重要である。酸素療法の施行中ら 挿管中、あるいは人工呼吸器装着中でも、口腔の清拭は行う。それぞれの場合で異なる注意が必要であることを念頭におき、援助する。舌根部や咽頭部は刺激すると嘔吐反射を誘発しやすいので、気をつける。
意識レベルが低下している患者は、麻痺があれば麻痺側を上にした側臥位とする。
家族への援助
中枢性呼吸障害のある患者は死に直結しており、急激な発症を伴っている。家族にとっては予測もできないことも多いため、状況を説明して、少しでも患者と過ごせるように環境を整えることが重要である。さまざまな治療・処置・援助にもかかわらず救命できなかった場合は、グリーフケアを考慮する。
重症筋無力症やギラン=バレー症候群、パーキンソン病などで末梢性呼吸障害を伴う場合には、症状の悪化とともに徐々に呼吸障害も重症化する。酸素の投与から、状況によって気管挿管、気管切開にいたることもあり、家族の不安 は増強する一方であろう。日々の変化を観察してコミュニケーションをとり、家族の不安な気持ちを聞き、少しでも気持ちの負担が緩和できるように援助する。リエゾンナースや緩和ケアチームなどと相談して、チームでかかわることも重要である。
コミュニケーションの援助
人工呼吸器を装着した場合は、気管挿管・気管切開などによるコミュニケーション障害から、不安が一層増強し、精神的な問題が生じる。患者だけでなく、家族も不安に陥る。適宜説明を行って、患者と家族がともに過ごす環境を整えることが重要である。また意識状態が改善してきたら、コミュニケーションの方法についてリハビリテーション部とも相談して考えていく。

慢性期・回復期における援助

体位ドレナージ
急性期が過ぎて肺機能の改善や向上のために、スクイージング、軽打、振動などが必要に応じて行われ、機械的刺激を与えて痰の移動を促し、気道から出す。

手術後の回復
手術侵襲部の修復のために物質代謝が亢進し、酸素不足をおこしやすくなっている。酸素不足は脳浮腫を増強させるため、脳組織に十分に酸素が供給できるように気道確保と酸素療法の管理が重要になる。
疾患の状態をみながら離床を促すことも、肺機能の改善につながる。

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